転移と逆転移 の商品レビュー
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「転移」と「逆転移」に焦点をおき、対象関係論の立場から論じられている。本書では、転移と同じくらい(むしろそれ以上?)に逆転移を重視することで、クライエントとセラピストの内的な問題、そしてその相互作用を解き明かしている。また、逆転移を「融和型逆転移」と「補足型逆転移」に大別することで、逆転移の役割を明確にしている。そして、逆転移という概念が無分別に使用されていることを批判し、悪戯に用いないよう指摘している。 著者は、自らの転移、逆転移論を、フロイトの理論から解釈し直し、見事に(≒より治療的に)再統合しており、その論の明快さには感動した。そして、治療の行き詰まりを、ただクライエント自身の責任とするのではなく、セラピスト側にある問題(逆転移)でもあるとし、理解することで治療を促進すると論じている。その考えは、セラピーにおけるセラピストとクライエントの関係性の大切さを意味しているともいえ、人間的で温かい印象を受けた。それは単なる理想主義ではなく、冷静で実直な論考でもある。
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