七月七日 の商品レビュー
文芸誌への連載だったためか、一章ごとが独立した短編風になっている。ややエピソードを詰め込みすぎ、作り込みすぎのきらいもあるが、ラストの短冊にはグッとくる。
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太平洋戦争下のサイパン島での戦闘を描く。戦争は敵も味方も、勝者も敗者も、等しく地獄を見る、と教えてくれる作品。素晴らしかったです。涙が出たのは私が日本人だからですかね。多くの人に読んでもらいたい一冊でした。
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五色の短冊に子ども達は、偽りのない願いを書きつける。アメリカ兵として戦う日系二世達はそれに目を背ける。サイパンの地で、国家に忠誠を示す者同士が銃を向け合う。その横で短冊が揺れる。教育は洗脳ではなく希望であってほしいものだ。
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1944年の6月のサイパン島。多数の民間人がいるこの島で日本軍とアメリカ軍が衝突。日系二世のショーテ」はアメリカ軍の一員として、捕虜の尋問や、日本語の文書の解読などを行う語学兵の一員として活動していた。 古処さんの戦争小説の読み応えは、やっぱり他の小説とは一線を画しているよ...
1944年の6月のサイパン島。多数の民間人がいるこの島で日本軍とアメリカ軍が衝突。日系二世のショーテ」はアメリカ軍の一員として、捕虜の尋問や、日本語の文書の解読などを行う語学兵の一員として活動していた。 古処さんの戦争小説の読み応えは、やっぱり他の小説とは一線を画しているような気がします。単に反戦、厭戦というメッセージにとどまらず、戦争から明らかになる人の業すらも冷徹に見つめようとするためです。 アメリカ兵として日本人たちから敵視され、アメリカ兵たちには見た目から差別を受けてきたショーティ。アメリカに忠誠を誓うものの、一方で親が生まれた国を敵とするショーティの複雑な心理も描かれます。 そして、この作品で古処さんが見つめようとするのは、日本人の国民性ともいえるもの。「生きて捕虜の辱めを受けず」を胸に自爆すらもいとわない攻撃を続け、決して降参しない日本兵たち。アメリカ軍にとらえられ、あるいは投降し、自分の国の人たちに、今の姿を見られる恐れる捕虜たち。 いずれの心理の切実さも、古処さんは冷徹に描きます。そしてクライマックスも鮮烈……。今の時代からすると、あまりに割に合わないように思える、日本兵たちやサイパンの民間人たちの選択や、行動、そして思考。 それを単に戦争の悲劇や凶器ととらえず、今の時代にも共通する日本人の心理と関連させて描くのが、古処さんの戦争小説のすごいところだと思います。 個人的に現代と最もつながっていると感じた箇所があるので、引用します。場面的には、投降捕虜を有用性について語る場面。本来捕虜はジュネーヴ条約によって、アメリカ軍の尋問に対して必ずしも答える義務はありません。また捕虜に対しても、人道的配慮が必要です。しかし日本人たちは、捕虜の権利を知らないため、アメリカ軍に捕まってから、食事や寝場所の提供をされると、それに恩義を感じ、情報を話し始めます。 このことについてこう書かれています。p202より 「それを自国に対する裏切り行為と見るのは簡単である。しかし、捕虜の権利すら知らないところにこそ本当の原因があった。敵の手に落ちた場合の教育を日本軍は施さない。捕虜になる前に死ねと教えているからにはそんな状況に陥る者がいるはずもなく、よって教育も必要ないという理屈だった。 もしもの想定自体を彼らは不謹慎と感じるらしい。軍隊の整備を戦争の待望と見なすような、震災の備えを地震の切望と見なすような、不思議な感覚だった。彼らはつまり、存在すべきでないものを見ようとしない。名を変えてでも存在しないものと位置づける」 3・11の際の原発事故では、『想定外』の事態が起こったため、何もできなくなってしまった東電や国の姿がありました。これには原発の安全神話があったそうですが、そうした神話が生まれた背景にも、安全神話が崩れるような想定を不謹慎ととらえる心理があったのではないか、といような気がします。 古処さんの戦争小説ってほとんど絶版になっているのがもったいないと思えて仕方ありません。売れにくいジャンルだとか、実際の戦争体験者の声だとか、いろいろあるのかもしれませんが、それでも読まれるべき小説だと思うんだけどなあ…… 実際に刷るのが難しいならいつか電子書籍などで、復刊してくれるといいなあ。それなら自分は間違いなくkindleを買うのですが。
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日系二世アメリカ語学兵ショーティが主人公 アメリカに忠誠登録したショーティの目を通して、サイパン島で捕虜となった日本兵や民間人の懊悩が語られる。
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戦争についてはまだまだ知っておかなければならないことがたくさんあるな。 日系二世たちはどんな思いであの戦争を戦っていたのか。 日本人か、アメリカ人か。どちらでもありどちらでもない。 国からも親からも一定の距離を保っていなければ自分というものを生きることはできないのだろう。 そ...
戦争についてはまだまだ知っておかなければならないことがたくさんあるな。 日系二世たちはどんな思いであの戦争を戦っていたのか。 日本人か、アメリカ人か。どちらでもありどちらでもない。 国からも親からも一定の距離を保っていなければ自分というものを生きることはできないのだろう。 それにしても、どうして戦争はなくならないのだ。 こういう戦いを「知っている」世代はどんどん少なくなってしまう。誰もいなくなるまえに。伝えていかなきゃならない。手渡すことを託された世代なんだろうな、自分たち。
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アメリカの日系兵から見た、サイパン島の戦争の姿。 劇的なことより、じっとりとまとわりつくサイパンの気候のような不快感、じりじりと精神を消耗していく様が、リアルで印象的だった。 面白かった、という言葉は内容をかえりみると不謹慎に思うが、面白かった。読んで良かったと思う。 『永遠の...
アメリカの日系兵から見た、サイパン島の戦争の姿。 劇的なことより、じっとりとまとわりつくサイパンの気候のような不快感、じりじりと精神を消耗していく様が、リアルで印象的だった。 面白かった、という言葉は内容をかえりみると不謹慎に思うが、面白かった。読んで良かったと思う。 『永遠の0』はベストセラーになったが、戦争には英雄なんていないし、美談もあり得ない。そういう意味で、この本は戦争の真の姿の一部を見せてくれていると思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
読んでいて疲れる。 作者の言いたいことしか入ってこなくて、想像する余白がない。だからその分「他人事」のような感覚すらある。 「あぁそう」というような。 日本兵にしろ、アメリカ兵にしろ、時々「現代人」になる。何だろうか。 とりあえずこの著者の本はあと1冊持っているので読んでみようと思うが、私にはちょっと合わないのだろう。
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やりきれないなという思いを残す作品。 圧倒的有利な立場についたアメリカ兵でさえも多くの戦死者を出していたんだなと 至極当たり前のことを改めて実感させられました。 古処作品は臨場感がない、泥臭さがないという書評をしばしば目にしますが 真偽を計れない戦後生まれの私にとってはとても...
やりきれないなという思いを残す作品。 圧倒的有利な立場についたアメリカ兵でさえも多くの戦死者を出していたんだなと 至極当たり前のことを改めて実感させられました。 古処作品は臨場感がない、泥臭さがないという書評をしばしば目にしますが 真偽を計れない戦後生まれの私にとってはとても迫力のある描写をされているように感じます。 願わくば…言葉をもう少しわかりやすくして頂けるとありがたい^^; 陸軍の基礎知識がない身としては毎度苦戦させられます。
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古処誠二の本はいつ読んでも胸に迫る。 戦争や防衛というものを題材に、そのある側面を忠実に、そして的確に描き出す。この作品もサイパン島の攻防を日系二世のアメリカ兵の視点から真摯に冷徹に描いている。複雑な事情や局面をぶれることなく一人称で見つめるこの作品は、戦争というもの、国家という...
古処誠二の本はいつ読んでも胸に迫る。 戦争や防衛というものを題材に、そのある側面を忠実に、そして的確に描き出す。この作品もサイパン島の攻防を日系二世のアメリカ兵の視点から真摯に冷徹に描いている。複雑な事情や局面をぶれることなく一人称で見つめるこの作品は、戦争というもの、国家というもの、日本人というものを本当に的確に表現していると思う。大傑作である。凄惨な描写に目を覆いたく場面もあるが、それこそが戦争の現実。「永遠のゼロ」などという紛い物の戦争小説に感動している人たちにぜひ一読してもらいたいと強く思う。 この本が小説として成功しているのは、冷徹なだけではなく、七夕という祈りの儀式で読者の想いを浄化して終わっているところだと思う。物語に大きな起伏があるわけではなく、淡々と日常が語られるこのスタイルが多くの人の目に留まらない理由なのかなと考えたりもするが、本当に本当に、古処誠二の作品はたくさんの人たちに読んでもらいたいものである。
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