学問の暴力 の商品レビュー
明治以降のアイヌ墓の調査記録を丹念に追っており、調査の主体となる人物やその内容、成果を淡々と報告している。 その検証には最後の2章を割いている。成果の検証が大部分であるが、それがほんとうに『学術研究』であったのかというもっとも根本的な部分への批判につながるのである。アイヌ墓の調...
明治以降のアイヌ墓の調査記録を丹念に追っており、調査の主体となる人物やその内容、成果を淡々と報告している。 その検証には最後の2章を割いている。成果の検証が大部分であるが、それがほんとうに『学術研究』であったのかというもっとも根本的な部分への批判につながるのである。アイヌ墓の調査はあいまいな前提で行われ、資料は恣意的に検証され、誤った結論が導かれているのである。 その検証過程を経て、著者は始めて『学問・研究』が権力化され、抑圧を産み差別を顕在化させるという図式を描いてみせる。声高々な批判があるわけでも糾弾があるわけでもないけれど、論理的であるが故に考えさせられる部分も多い。 もちろん被害者であるアイヌたちの言葉も収録しているが、それはきわめて限られた範囲でしかそもそもアイヌの証言自体が残されていないことが、逆にアイヌの立場を良く表しているのだろう。
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