技術者に必要な地すべり山くずれの知識 の商品レビュー
☆4は技術者向けで一般向けではないため。 職業柄地すべりと山崩れの違いは一応分かっているつもりでいたが、この本で新しく知ることが多かった。 極論すると、地すべりを知ることは日本の国土と文化のある側面を知ること。地すべりの知識なくして山村の生活、とりわけ棚田のことは理解できない...
☆4は技術者向けで一般向けではないため。 職業柄地すべりと山崩れの違いは一応分かっているつもりでいたが、この本で新しく知ることが多かった。 極論すると、地すべりを知ることは日本の国土と文化のある側面を知ること。地すべりの知識なくして山村の生活、とりわけ棚田のことは理解できない。 通説では日本人の異常な米作りの熱意が、斜面を棚田に変え少しでも米の収量を増やそうとした、となる。 真相は違う。棚田は基本地すべり地にある。そして、棚田で作られる米は収量が多く、品質もよかった。四国では平家の落人が山奥に隠れ住んだという。彼らの自活を支えたのも地すべり地で米がとれたから。地すべりが起きる山地だからこそ米が作れるというのはなんという逆転。 地すべりは斜面の深い場所にすべり面ができ、けっこう長い時間をあけて少しずつ滑る。滑る理由は水により岩石が風化しているから。地すべり地は地下水に恵まれている。いくら日本人が米に命をかけていても、棚田の上まで水を汲み上げなければいけないのではやっていけない。棚田は上から湧いてくる水を使う。 土も垣根も、そして堆肥も皆山でまかなえる。落ち葉や落ち枝が堆肥になる。平地では労力をかけて山から運ばなければならない。そして、土を掘り起こす天地返しは、定期的に起きる地すべりで自然と行われる。人は壊れた棚田を修復するだけ。 棚田が斜面を水田に変えるだけなら、たしかに山一帯が田んぼになっていなければおかしい。限られた斜面にだけ棚田があるのは地すべり地だから。そして、山の中の限られた特別な場所にあるからこそ、棚田は美しく神秘的な景色になる。 美しさには理由があるというこれも一つの事例。
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