なぜ富と貧困は広がるのか の商品レビュー
現代の労働問題を考える上で必読の書である。 これは労働問題の権威である二人の学者が労働者向けの教科書として書いたものである。新自由主義の概要や労働組合の歴史について、最も基礎的な部分が過不足なく書かれているのは、さすが第一人者の面目躍如といったところか。湯浅誠や雨宮処凛の著作...
現代の労働問題を考える上で必読の書である。 これは労働問題の権威である二人の学者が労働者向けの教科書として書いたものである。新自由主義の概要や労働組合の歴史について、最も基礎的な部分が過不足なく書かれているのは、さすが第一人者の面目躍如といったところか。湯浅誠や雨宮処凛の著作は一般にもよく読まれているが、自分の触れた事例を中心に書かれているので、労働問題の全体像を捉えるにはこちらの方がいい。 特に欧米では産業別組合が主だが日本では企業別労働組合が主流であるということは、日本で労働運動が活発でない理由であることは間違いないが、一般にはあまり認知されていないことではないか。企業別労働組合だと、「そんなに賃金を上げたら他者との競争に負けてしまう」という企業の論理に巻き込まれ、労働者の主張が通らなかったという背景があることを、しっかり認識しなくてはならない。 ただし、本書は事実関係を把握するためにも良書だが、労働運動を支援するという明確な目的によって書かれたものであることは、しっかり意識しなくてはならない。 特に、第1章4節及び第2章はマルクス主義の理論的な話を展開している。他の箇所では主に現状を述べているので、理論的な話を同じ本の中でしたのは失敗だったのではないか、とも思える。
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