台湾の政治 の商品レビュー
戦後の台湾政治をまとめた大著。中国全土を治めた国民党政権が、いかにしてその「大義」を維持しつつ、台湾等身大の政治体制へと変えていったのかを細かく分析している。中国全土を治めているはずの中華民国が、台湾地域だけの公選で総統を選ぶという制度を導入することが如何に大変だったかを気付かさ...
戦後の台湾政治をまとめた大著。中国全土を治めた国民党政権が、いかにしてその「大義」を維持しつつ、台湾等身大の政治体制へと変えていったのかを細かく分析している。中国全土を治めているはずの中華民国が、台湾地域だけの公選で総統を選ぶという制度を導入することが如何に大変だったかを気付かされる。李登輝が国民党総統時に本省人として台湾アイデンティティに寄り、それが外省人に忌避され退任されたあと、民進党を中央よりにするため自ら台湾アイデンティティ急進派のポジションを取り、さらに陳水扁政権の汚職発覚で嫌気が差し、2008年の総統選では中立にたったことがわかりやすく書かれており、本書後の2012年総統選では再び民進党をサポートとしたことが理解しやすい。また、台湾の原住民、客家に対しての「白色テロ」、それに先んじたニ二八事件、によって蒋経国死去までは本省人が声なき民だったことや、その後の民主化で原住民と同居住地区漢民族の間で対立が起きていることなども紹介されている。政治史としての台湾省凍結、国民大会廃止、監査委員の司法官庁化などの経緯や論点もわかりやすい。残念なのは、経済に関する内容が少なく、台湾と中国が経済的に密接になっていった様子が非常に荒く、ここ2回の総統選争点になった経済に関する背景理解が十分に得られないことだ。
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