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大学で何を学ぶか の商品レビュー

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2012/06/10

本書は、現在(2012.6)のところ、オルテガの次に共感できる大学論となった。バランスがとれた中道の大学論を探していたのだ。中道=あたりまえなのではなく、本質なのではないかと感じている。以下に覚えておきたいことを書いておく。 学問(サイエンス)には様々な分野があり、相互の関係を...

本書は、現在(2012.6)のところ、オルテガの次に共感できる大学論となった。バランスがとれた中道の大学論を探していたのだ。中道=あたりまえなのではなく、本質なのではないかと感じている。以下に覚えておきたいことを書いておく。 学問(サイエンス)には様々な分野があり、相互の関係を保つ統一体である。著者は、学問を学ぶ意味を考える際、学問の深堀は研究(知識の進歩)には寄与するが、学生の成長をもたらさないといい、逆に、学生の成長をもたらすものは、「知識と知識の関係を学ぶ」こと説いている。各専門分野に精通する教員が、相互に調整し合う学者共同体の形成が「理想」としてある。 腑に落ちたのは、知識を獲得する目的の2つの言及だ。①人格、人生、社会のため(手段としての知識獲得)と、②知識自体のため(目的としての知識獲得)がある。さらに、人間の本性として、肉体・物質的な欲求が満たされた後、人は真理の探究に惹かれることになるともいっている。   「リベラル」は、サーバイルやボケーショナル・スペシャライゼーションに対置され、いかなる目的にも鼓舞されないとしている。そして、リベラルな知識の目的性として、世俗性(有用な知識:物質)・永遠性(宗教的知識:魂)と関わることと、反対にその無目的性として、現世の改善も魂の繕いもしないことを挙げた。すなわち、リベラルは、「教養ある知性・洗練された趣味・率直で公正な精神、高潔かつ礼儀正しい態度」「美と同様に、知性の涵養・知的卓越以上でも以下でもない」といっている。 知性の向上、精神の拡大・啓蒙とは、受動的な知識の受容ではなく、自らが持つ意見の「質」と、学んだことを既知のことと照合する能力が大切。獲得した知識の内容に秩序と意味を考えることも重要としている。 また、膨大な事象や観念に精通しているだけだと、自分の持ち場では重宝され活躍するのみで、知性を修養しておらずリベラルといえない。多くは事物相互の真の関係を知らず、総括的結論を導く判断基準を有していない。 では、どうすべきか。多くの事柄を同時に一つの統一体として眺め、普遍的な体系の中に位置づけることが求められる。物事のジャッジの際に確信を得たうえでそれができれば意味があるとしている。 以上が職業人を養成する際の、リベラルアーツの効用といえよう。

Posted byブクログ