砂漠の戦車戦 上 の商品レビュー
第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争)において南部戦線を戦ったイスラエル軍の一機甲師団長による回顧的記録.上巻は開戦から,シリア方面への戦力傾注に伴うシナイ半島での防勢方針決定までの流れを記す.圧倒的な数的劣勢にあってなお敵の縦深攻撃を食い止めたとは言え,実際には政治的要素,エジプ...
第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争)において南部戦線を戦ったイスラエル軍の一機甲師団長による回顧的記録.上巻は開戦から,シリア方面への戦力傾注に伴うシナイ半島での防勢方針決定までの流れを記す.圧倒的な数的劣勢にあってなお敵の縦深攻撃を食い止めたとは言え,実際には政治的要素,エジプト軍の教範,また従前の一連の戦争でもたらされた空軍による抑止力の効果によるところも大きかったと見られる.一方で自軍の戦術的失策や情報の不足・軽視により,開戦直後にどのような損害が出たか,また劣勢の中でイスラエル軍が如何に果敢に戦ったかが,克明に描かれている.とりわけ,開戦2日後の反攻で,シャロン師団が不可解な移動をした結果,著者の麾下にあった部隊の一部が孤立し,大損害を被った問題については,現場の状況を無視して立てられた上層部の拙劣な戦略が,直接の原因となったことが伺える. 時折前触れもなく時系列を遡るのと,固有名詞が一定しない(特に人名でファーストネーム・ラストネーム・渾名が混在し,表記揺れも発生している)のとで,経過を追うのが容易でない箇所が散見され,些か読みづらい.
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