家族の昭和 の商品レビュー
関川夏央 著「家族の昭和」、2008.5発行。著者は、携帯電話がなかった時代、電話するには覚悟が要ったと。私の場合、電話するときは、いつもある種覚悟をして電話してますw。昭和の終焉は、昭和64年1月7日。確かに、良きにつけ悪しきにつけ、昭和は家族の時代でしたね! 著者は、家族の昭...
関川夏央 著「家族の昭和」、2008.5発行。著者は、携帯電話がなかった時代、電話するには覚悟が要ったと。私の場合、電話するときは、いつもある種覚悟をして電話してますw。昭和の終焉は、昭和64年1月7日。確かに、良きにつけ悪しきにつけ、昭和は家族の時代でしたね! 著者は、家族の昭和を描くに当たり、向田邦子、幸田文、鎌田敏夫などの作品を紹介しながら、昭和の情景を描いています。そして、ともすれば、好きな作家の説明に力が入っています(^-^) この本は、限りなく、向田邦子讃歌であり、幸田文讃歌ですw。
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昭和ヒト桁生まれである向田邦子の「父の詫び状」を元にして戦前の「家族」の在り様を、幸田文の「おとうと」「流れる」に拠り一家の中心として女手で家族を支えた女性の生きざまを探り、そして昭和末年に鎌田敏夫脚本によるTVドラマ「金曜日の妻たちへ〜恋におちて」「男女七人夏物語」を丹念に引用...
昭和ヒト桁生まれである向田邦子の「父の詫び状」を元にして戦前の「家族」の在り様を、幸田文の「おとうと」「流れる」に拠り一家の中心として女手で家族を支えた女性の生きざまを探り、そして昭和末年に鎌田敏夫脚本によるTVドラマ「金曜日の妻たちへ〜恋におちて」「男女七人夏物語」を丹念に引用しながらすでに「家族」が失われ昭和という時代の終焉が予感されていた時代の「感覚」を呼び覚ます。 この他にも、吉野源三郎「君たちはどう生きるか」、そして最後に小津安二郎の映画「麦秋」「東京物語」「秋刀魚の味」などにも触れられていますが、メインになる引用元は上記の三作家の作品になります。 向田邦子の作品は読んだことはありません(実は今読み始めていますが)。 「父の詫び状」はドラマ化されてますがそちらも観た記憶はなし(ただし杉浦直樹の印象はある)。 ただ、この本でも紹介されている、向田邦子と十歳以上年上の妻子ある恋人との書簡をめぐる「向田邦子の恋文」についてはNHKスペシャルか何かでドキュメンタリーを視たことがあります。 幸田文の「流れる」については、成瀬巳喜男監督の映画化作品を観ています。 これは本当に素晴らしい映画で、今まで古今東西約千本の映画を観てますが、出来の素晴らしさという点では一番と言ってもよいくらいの作品。 映画に触発されて原作の小説も読みました。 「恋におちて」と「男女七人」についてはリアルタイムで知ってます。 いずれも中学生の頃、「恋におちて」は観た記憶はないですが一種社会現象になった印象は強く、「男女七人」は夕方の再放送だったかもしれないけど全部観たと思います。 というわけで、個人的にはけっこう馴染みがある作品が出てくるので興味深かったのですが、丁寧な引用による解説が多量にあるのでこれら作品に馴染みがない人でも付いていけないようなことはないと思います。 昭和という時代に愛着が深い著者が、昭和における「家族」の全盛期と衰退を感慨深く辿る、その過程を要約するのはなかなか難しいので、とにかく読んでみてください、としか言えません。 自分が世代的に興味深く感じたのは、「金妻」ですら最早20年以上前のものであり、既にこのような形で歴史的に検証される対象になってしまっている、という事実です。 この本での検証は昭和末年で終了していますが、その後の平成の時代においても日本の社会や家族の姿はさらに形を変えているはず。 それが客観的に検証されるようになるまでにはもう少し時間が必要なのでしょうか。
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久しぶりに関川夏央さんを読んだ。小説 テレビドラマ 映画で 昭和が如何に変貌して行ったのかを家族の切り口を透して論じているけどなかなか面白かった。工夫して一粒で二度美味しい方法(小説 テレビドラマ 映画を語り昭和を紐解く)で昭和を分析するとは、関川さん健在なり ですね。今...
久しぶりに関川夏央さんを読んだ。小説 テレビドラマ 映画で 昭和が如何に変貌して行ったのかを家族の切り口を透して論じているけどなかなか面白かった。工夫して一粒で二度美味しい方法(小説 テレビドラマ 映画を語り昭和を紐解く)で昭和を分析するとは、関川さん健在なり ですね。今は平成29年だけれど関川さんならば昭和92年 と言うべきかな(笑)
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社会の30年前は 「歴史化」 されるべきなのに、なかなかそうならない。とくに日本社会でそれを阻むのは、個人の感傷的 「回想」 の集合であるとする著者が、昭和時代の文藝表現(映像作品を含む)を 、「家族」 という断面で、「歴史」 として読み解いた刺激的な本です。 あとがきに、『昨今...
社会の30年前は 「歴史化」 されるべきなのに、なかなかそうならない。とくに日本社会でそれを阻むのは、個人の感傷的 「回想」 の集合であるとする著者が、昭和時代の文藝表現(映像作品を含む)を 、「家族」 という断面で、「歴史」 として読み解いた刺激的な本です。 あとがきに、『昨今、家族の崩壊を憂える声しきりだが、昭和戦後人が 「イデオロギー」 に翻弄されつつ 「衣食足りて不善をなす」 ということわりに従った必然の結果』 と厳しい。 「...品のない大衆は昭和11年にもいたが、現代にもいる。数はさらに増している。技術の進歩と品格の向上には相関関係が無い。問題は、大衆の品のなさを嘆く自分もまた大衆のひとりにすぎない、というジレンマである。」 と、著者の目は澄んでいる。 向田邦子 『父の詫び状』 に見る 「戦前の」 の夜、対比される、吉野源三郎 『君たちはどう生きるか』。女性シングル、幸田文 『流れる』 の戦後から、退屈と 「回想」 の、鎌田敏夫 『金曜日の妻たちへ』、『男女7人夏物語』、山田太一 『ふぞろいの林檎たち』。 時間は恐ろしい。文が玉に教えた、大叔母に対する 「口上」 は、私には思い浮かばない。その外、ざっかけない、なんどり、脊梁骨を提起しろ...お手上げです。でも、回想は止めよう! 「おとなは、大事なことは、 ひとこともしゃべらないのだ」
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向田邦子と幸田文についての文章は、さすが関川夏央だとうなりつつ読みました。後半の金ツマの箇所は、前半ほどの説得力はなかったので★3つ。
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久々の関川夏央の新刊。と言っても今年の5月発行なので、発行から半年以上経過している。実際に購入したのも夏頃だったのであるが、なんだか読むのがもったいなくて(次にいつ新刊が発行になるのか分からないから)、これまでひっぱってきたが、とうとう読んでしまった。 この本に対する感想も色々と...
久々の関川夏央の新刊。と言っても今年の5月発行なので、発行から半年以上経過している。実際に購入したのも夏頃だったのであるが、なんだか読むのがもったいなくて(次にいつ新刊が発行になるのか分からないから)、これまでひっぱってきたが、とうとう読んでしまった。 この本に対する感想も色々とあるが、それよりも書かずにいられないのが、今回のタイの政治的騒動の話だ。僕自身バンコクに住んでいて、かつ、空港閉鎖時にシンガポールに出かけていたため、帰ってくるのが大変だったという影響を受けている。関川夏央の本とは全く関係がないのだけれども、一言書いておきたい。 まずクリアにしておきたいのは、今回の反政府運動、あるいは、反政府運動に反対する「親政府運動」とでも言うべきものが、とても大衆運動とは思えないということだ。反政府運動が自然発生的に起こったわけではないし、親政府運動も同じである。現在の首相および政治権力中枢にいるのはタクシン元首相の流れをくむ勢力であり、反政府運動をリードしているのは反タクシン勢力であるが、いずれもタイ社会からすれば、エリート層に属する人たちである。タクシン派が新興エリート、反タクシン派が守旧派エリートと一般的に位置づけられている。今回の騒動中の両派の活動は、どちらも一般大衆のVoluntaryな活動の結集ではない。要するに新旧の少数エリート層の権力争いだったとしか思えないのである。母数が少ないので何とも言えないのだけれども、私の周囲のタイ人で本件に熱くなっていた人は誰もいない。PADが首相府占拠を開始したのは8月下旬のことであり、既に3ケ月以上が経過しているが、それは大衆を巻き込んだ反政府運動には遂に発展しなかった。現地の新聞の世論調査等を見ても、あるいは、新聞の論調を見ても、タイ人一般は今回の騒動を「迷惑」と感じ、「お互いに話し合って早く解決して欲しい」と、すなわち、他人事だと思っている様子がありありと伝わってくるのである。 一方で今回の空港閉鎖による影響はけっこう大きいように思う。タイから出国できなかった、あるいは、タイに入国できずに迷惑を蒙った旅行者、空輸できなかった貨物、観光のハイシーズンに起こったことによる経済的影響。でも、何よりもタイという国の評判を大きく損ねた点が一番大きな損失だと思う。バンコクに住んでいれば、首相府および空港周辺以外の場所は全く安全なことは分かるのだけれども、外国のテレビニュースで繰り返し流れる暴力的な場面、あるいは、途方にくれた旅行者の様子を見れば、タイという国は安全でもなければ、安定的な国とも思えなくなるのではないか、と考えずにいられない。それはタイへの観光客を減らし、タイへの投資を減らすというマイナスの影響を及ぼすことになるのではないかと思う。 何が言いたいかというと、一部のパワーエリート層の権力争いにより国の評判が傷つき、結局、損失を受けるのはエリート層に属さない普通の人たち、という構図・構造である。程度の差はあれ、それは旧共産主義国家や、あるいは、昔の大日本帝国や現在の北朝鮮の構図・構造と相似形をなしていると言えるのではないだろうか。タイに仕事で頻繁に来るようになったのは数年前、実際に着任し生活と仕事の拠点をバンコクに持つようになってから数ヶ月。もともとタイは好きな国だったけれども、日常的にタイの人たちと接触しながら暮らすようになって、タイがより好きになっているだけに、今回の騒動は非常に残念だ。
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母が向田邦子のドラマを好んで見ていたこともあってか、子ども心に「向田邦子好き!」と思って、高校生〜大学生の頃に何作か読みました。 そんなこともあり手にした本書ですが、幸田文の作品について書かれている章が、より興味深く読めました。 実際のところ、幸田露伴も幸田文も読んでいないものの...
母が向田邦子のドラマを好んで見ていたこともあってか、子ども心に「向田邦子好き!」と思って、高校生〜大学生の頃に何作か読みました。 そんなこともあり手にした本書ですが、幸田文の作品について書かれている章が、より興味深く読めました。 実際のところ、幸田露伴も幸田文も読んでいないものの、本書を通して、幸田親子のことや昭和戦前、戦後あたりの価値観に共感したり、時代の隔たりを感じたり。。 本として面白かったのですが、やや上の世代でないと、映画も本も、時代を共有するという点でタイムラグがないという意味で「知らない」ため、今ひとつ乗り切れなかったように思う。とはいえ、ばっちり昭和生まれなので、うっすらとではありますが、過ぎし日の昭和が懐かしく感じられた。 本書で紹介されていた、幸田文作品はもちろんのこと、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』も読んでみたい。
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社会の三十年前は「歴史化」されるべきだ、との考えから小説や人気のあったテレビドラマなどを分析している。 取り上げられている作品は、向田邦子『父の詫び状』と吉野源三郎『君たちはどう生きるか』、幸田文の『流れる』『おとうと』ほか。どれも愛読した作品だ。 テレビドラマでは鎌田敏...
社会の三十年前は「歴史化」されるべきだ、との考えから小説や人気のあったテレビドラマなどを分析している。 取り上げられている作品は、向田邦子『父の詫び状』と吉野源三郎『君たちはどう生きるか』、幸田文の『流れる』『おとうと』ほか。どれも愛読した作品だ。 テレビドラマでは鎌田敏夫「金曜日の妻たちへ?」「男女7人夏物語」「秋物語」が中心に据えられ、山田太一の「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」「ふぞろいの林檎たち?」にも言及している。トレンディドラマとして人気を博したが、熱心な視聴者でなかったので、ストーリーを活字で追っていくだけに留まった。 映画は小津安二郎の3作品。「麦秋」「東京物語」「秋刀魚の味」が取り上げられている。「東京物語」は最近観る機会があったのでしみじみと読んだ。 テレビドラマの章は別として、著者が意図した分析よりも、作品自体の印象のほうが際だっている。
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