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だましてください言葉やさしく の商品レビュー

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2024/09/22

永瀬清子さんの詩文集ですね。 谷川俊太郎さんのプロデュースのアンソロジーです。 永瀬清子さん(1906ー1995、岡山県生まれ)詩人。  『谷川俊太郎さんが「永瀬さんは、短章がいいので詩と組み合わせると面白いですよ」』と言われて生まれた詩文集です。  封建時代のさなかに産まれて、...

永瀬清子さんの詩文集ですね。 谷川俊太郎さんのプロデュースのアンソロジーです。 永瀬清子さん(1906ー1995、岡山県生まれ)詩人。  『谷川俊太郎さんが「永瀬さんは、短章がいいので詩と組み合わせると面白いですよ」』と言われて生まれた詩文集です。  封建時代のさなかに産まれて、男尊女卑の旧態依然の因習生活でしたが、「私が子供のとき、最も早く民主主義を教えたのは羽仁もと子女史だったのではないかとおもう。」短章でそう綴られています。女性の自立に目覚めて「女の戦い」をされた詩人です。 「だましてください言葉やさしく」(大いなる樹木)  だましてください言葉やさしく  よろこばせてくださいあたたかい声で。  世慣れぬわたしの心いれをも  受けてください、ほめてください。  ああ あなたには誰よりも私が要ると  感謝のほほえみでだましてください。  その時私は  思いあがって傲慢になるでしょうか  いえいえ私は  やわらかい蔓草のようにそれを捕へて  それを力に立ち上がりましょう。  もっともっとやさしくなりましょう。  もっともっと美しく  心ききたる女子(おなご)になりましょう。  ああ私はあまりにも荒地にそだちました。  飢えた心にせめて一つほしいものは  私があなたによろこばれると  そう考えるよろこびです。  あけがたの露やそよかぜほどにも  あなたにそれが判ってくだされば  私の瞳はいきいきと若くなりましょう。  うれしさに涙をいっぱいためながら  だまされだまされゆたかになりましょう。  目かくし鬼を導くように  ああ私をやさしく拍手で導いてください。 「私がいなければ何もない」(あけがたにくる人よ)  私がいなければ何もない  この美しい夕ぐれも  樹々の綱目のシルエット  そのゆるやかな描線の  音楽的なけむらいも  かたくな人の心のかげ  ありとも見えぬ不如意さも  誰も気づいてくれはしない  ただ私だけが知るばかり  まぶたひたすらみひらいて  蜜蜂が巣にかようよう  此の世のあわれ溜めておく  人に告げ得ずつたわらぬ  私の消える日皆消える  だのに甲斐なく詩をかいて  だのに甲斐なく詩をかいて   「早春」(大いなる樹木)  あけ方にふと目がさめると  空気がなんとなくにぎやかだ。  春が来てゐる。  地虫や草の芽のよろこびが  気温の中にこもってゐる。  私の心もしづかにもどけて  生まれてから過したたくさんの春の   やさしいとりどりの思ひ出がよみがへって来る。  早く死んだ昔の人が  世にくたびれた私にいたわりの声をかけてくれる。  しづかにあけてゆく空色の中に  オレンジジュースがそそがれる。  その時自分に対してもきびしすぎたことが  やっと私にわかってくる。  ああ彼の人にばかりでなくーー。  すっかり朝があけると  古い径に欅のこまかい枝の影が  まるで焔のやうにあをくちらめく。    *もどける=(固形物が)溶解する  自然を愛するロマンもおおらかに歌へあげられてきいます。短章も永瀬さんの生きざまが、力強く描かれていてユーモアも感じて愉しいですね。

Posted byブクログ

2021/02/27

永瀬清子さんの詩集で、文庫本サイズです。 題名のだましてください言葉やさしくや諸国の天女、あけがたにくる人よ、が収録されています。 明治の終わりに生まれた人なので、戦争に対してやこの頃の男女の世間での扱われ方、夫に対して、母としての詩が多めです。 この頃の女や女詩人として思い渦巻...

永瀬清子さんの詩集で、文庫本サイズです。 題名のだましてください言葉やさしくや諸国の天女、あけがたにくる人よ、が収録されています。 明治の終わりに生まれた人なので、戦争に対してやこの頃の男女の世間での扱われ方、夫に対して、母としての詩が多めです。 この頃の女や女詩人として思い渦巻く気持ちが伝わると思います。

Posted byブクログ

2011/07/19

これは詩集です、永瀬清子・・・未知の詩人、ただ、このタイトルにビビッと感応したのですが・・・・・たとえば64頁目を読んで、少しただならぬものを感じ始めるとしたら、どうなのだろうか?  何のために? (焔に薪を) 我々は何のために来たか。 人のために何かをさし出すためである。 私は...

これは詩集です、永瀬清子・・・未知の詩人、ただ、このタイトルにビビッと感応したのですが・・・・・たとえば64頁目を読んで、少しただならぬものを感じ始めるとしたら、どうなのだろうか?  何のために? (焔に薪を) 我々は何のために来たか。 人のために何かをさし出すためである。 私は何も他のことを知らず ただ詩によって何かをさし出すためである。 私を食え、食いちぎれ。   (後略)

Posted byブクログ