ミル自伝 の商品レビュー
JSミルがとても好きになった。 常軌を逸した父親による徹底的な教育によって磨かれたミルの天賦の才にも惹かれるのだが、それ以上に、精神の危機に陥り、詩や愛する人に触れて徐々に回復する人間臭いところに、自分と重なるところを感じ好感を持った。
Posted by
8歳の時にはラテン語でガリア戦記を読む。 ギボンやプルターク英雄伝などの歴史から、プラトンを始めとした哲学など、人によっては一生縁がないような古典的名著を幼少時からことごとく、父親の教育によって学んでいたJ・S・ミル。 そして、 10代の頃には、当然まわりの子供が知り得ないよう...
8歳の時にはラテン語でガリア戦記を読む。 ギボンやプルターク英雄伝などの歴史から、プラトンを始めとした哲学など、人によっては一生縁がないような古典的名著を幼少時からことごとく、父親の教育によって学んでいたJ・S・ミル。 そして、 10代の頃には、当然まわりの子供が知り得ないような知識を知り、理解力を有していた。 そんなミルに父は言う。 お前は社会へ出たら他の人が知りもしないことを大量に知っていることを知るだろう。しかし、それはお前が人より優れているということではなく、お前に教育を施すことができ、時間と熱意を割くことができた父親に恵まれた幸運あってのことなのだ。 と諭す。 自惚れを回避させるために。 そして、 ミルは 自分の能力は決して他人と同等かそれ以下であって、決して人並み以上ではないと。 なぜ、 ミルはここまで多分野にわたり 業績を残せたのか? このミル自伝からは 「環境」が非常に大きい と読み取れる。 人生は今が一番若い。 たった今から勉強しよう。
Posted by
【内容】 学問や教育の観点からその生涯を見る。 ジョン・スチュアート・ミル(1806-1873、イギリス)。 【類別】 自伝(自身の手による伝記)。 【着目】 主に世話になった人を絡めて書いていく手法が特徴的です。 頁78では研究的且つ表現的な職へ就くことに関して、ある視点で...
【内容】 学問や教育の観点からその生涯を見る。 ジョン・スチュアート・ミル(1806-1873、イギリス)。 【類別】 自伝(自身の手による伝記)。 【着目】 主に世話になった人を絡めて書いていく手法が特徴的です。 頁78では研究的且つ表現的な職へ就くことに関して、ある視点での不益を指摘し「ペンによって生計を立てねばならぬものは、面白くもないものをあくせく書くか、あるいは一番よいばあいで大衆によびかけるものにたよらざるを得ない。それに、自分の選んだ探究のほうには、食うための仕事のほうから割き得るほんのわずかの時間しかあて得ない」としています。筆者の父が文筆家でもあったという記述を踏まえると、父を近くから見た感想かもしれません。 第5章(頁119-162)前半部では精神危機に陥った際のことを描写しており、深く長い苦境へ陥っている人ならば読んで損がないものと思います。 頁123-124「分析の習慣というものは快楽なり苦痛なりの気持をすりへらす傾向があることを悟った、あるいは悟ったと思った」「分析ということの最上の長所は(私の考えたところでは)、何であろうと先入主によって生まれたものをそれが弱めくつがえすという傾向を持つことであり、ただ不安定に一緒になっただけの思想の結びつきを理知的に切り離すことを可能にするということである」筆者が分析行為を完全無欠なものだとは考えていないことが示され、その他の行為と同様に、行うべきときを見定めて行うのが肝要であると再認識しました。 頁128「幸福を直接の目的にしないばあいに却ってその目的が達成されるのだと、今や私は考えるようになった。自分自身の幸福ではない何か他の目的に精神を集中する者のみが幸福なのだ、(中略)副産物的に幸福が得られるのだ」ひどく曖昧な話ではあるもののこれまでの筆者の考えも含めると、人間の内面は無限に思考を吸いこむものであるがゆえに、自身の内面に属する幸福だけを追いもとめるよりも他へ思考を向ける方が有意義なのだと思えました。 頁194にて同じ箇所の執筆を二度行うことの利点が述べられています。 【備考】 このレビューは第30刷に拠っています。
Posted by
もっと早く、例えば子供が生まれたたばかりの頃に読んでおけばよかったと後悔している。 自伝であれば普通書かれているような、幼少期の家族や地域や友人との関わりや、そのことが自己の成長にいかに有益であったか、ということが、このミルの自伝では(父を除き)出てこない。 この本の前半部は...
もっと早く、例えば子供が生まれたたばかりの頃に読んでおけばよかったと後悔している。 自伝であれば普通書かれているような、幼少期の家族や地域や友人との関わりや、そのことが自己の成長にいかに有益であったか、ということが、このミルの自伝では(父を除き)出てこない。 この本の前半部は、ミルの父が、少年期から青年期のミルに対し、人としての生きる指針となる原理、知的生産を行い社会を改善する役目を果たす人が身につけるべき教養の範囲、勉強し自己の思索を発展させる基本的方法などについて、順を追って注意深く教えるさまが詳細に書かれている。 本物の知性はこうやって磨かれるものだ、と深く納得させられた。
Posted by
- 1