戦争の教え方 の商品レビュー
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国際教育情報センター勤務歴を持つ著者が、世界の教科書調査から各国の戦争・平和の記述に大きな差異があるとし、その違いを浮き彫りにしようとするもの。海外においては、教育における理想追求の一助として、青少年に対する平和希求・戦争否定の説諭を教科書で実行しようとしているらしい。1997年刊行で少々古いが、十分有益。自国の黒歴史を示しつつ討論を学生に展開させようとする米国は懐が深い(ただし、原爆は別儀)。逆に、戦争賛美に堕している共産主義国(特に中国)は唾棄すべきもので、彼の国に教科書検定批判はされたくない。 もっとも、日本の教科書もほめられたものではない。ディベートするに足る記述内容を全く備えていないからだ。複数の対立する見解を併置して議論を誘発しようとする海外の教科書は、思考を深めるのに適していることはいうまでもない。なお、東南アジア諸国(特にフィリピン)は東アジア・太平洋戦争を、連合国の一員の目から見たような記述を採用しており、当時の東南アジア諸国の本意(日本による占領政策は納得できるものではなかった)を垣間見ることができる。
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