りすん の商品レビュー
1/26 いわゆる「入れ子構造」として語られるように明確な二重構造があるのではなく、相互が相互に存立条件を担う二つの位相として書かれる。 ありきたりな難病モノであることを登場人物自身が忌避し、またあまりにもあからさまな「著者」名。
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帯の文句は「アサッテ」実践編。”アサッテ”というのは、作者のデビュー作で137回芥川賞の「アサッテの人」のこと。(”アサッテ”がなにかは、本を読んでのお楽しみ) 開始早々は、どうやら白血病に冒されているらしい妹と、それを看病する兄のダイアローグ。確かに帯の文句どおりに、今回も...
帯の文句は「アサッテ」実践編。”アサッテ”というのは、作者のデビュー作で137回芥川賞の「アサッテの人」のこと。(”アサッテ”がなにかは、本を読んでのお楽しみ) 開始早々は、どうやら白血病に冒されているらしい妹と、それを看病する兄のダイアローグ。確かに帯の文句どおりに、今回も”アサッテ”的な会話があるのですが、それは彼らが意識的にアサッテを利用して、周りを煙に巻いているだけで、前作のように本人が”アサッテ”なわけではなくて、前作とは似て非なるものになっていました。 これで「アサッテ」実践編と名乗るのはどうなのかなあと思っていたのですが、途中、この小説の”作者”な者が登場しだして、急に世界が”アサッテ”感を帯びてきます。兄妹の会話は”作者”により聞かれ書き写され小説として活字化され、それを兄妹が読んで自らの会話を変容させ、さらに”作者”が聞き書き取る……兄妹は小説によって作り出されたのか、兄妹が小説を作り出しているのか。 会話がどんどんうわすべりしていき、それでも小説は進み、うわすべりを加速させていきます。言葉を尽くせば尽くすほど増すうわすべり感は、かつてのニューアカ的な雰囲気があるのですが、そのニューアカ独特の僕らはそれを自覚してやっているんですという賢しらささえも、うわすべりの中に回収してしまっている分、ニューアカよりさらに一枚上手。そのうえ、そうした回収してしまう態度さえもさらに回収されうること、そうした回収に次ぐ回収が延々と繰り返されていくことを先回りして暗示してしまっています。 そうした差異化と、差異化を繰り返すことそれ自体が同質化を生み、さらなる差異化、同質化を拡大再生産させていくさまは、まさに前作「アサッテの人」でやったこと。ここまでくると、「アサッテ」実践編と言う理由がはっきり分かります。前作以上にアサッテな作品でした。
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東急田園都市線三軒茶屋駅から歩いてすぐの、飲食店街にある小さな焼肉店―それはカルビのあまりなコストパフォーマンスで有名な店に、まだ当時大学生であった私がもう連絡を取り合っていない彼女と二人で焼肉店の新規開拓のために入った時のことで、狭い店内の中でもとりわけ狭い窓側で、ファーストオ...
東急田園都市線三軒茶屋駅から歩いてすぐの、飲食店街にある小さな焼肉店―それはカルビのあまりなコストパフォーマンスで有名な店に、まだ当時大学生であった私がもう連絡を取り合っていない彼女と二人で焼肉店の新規開拓のために入った時のことで、狭い店内の中でもとりわけ狭い窓側で、ファーストオーダーのサワーの味の薄さに、もう推測されるその店の肉の味にふさぎこんでいた私の左側に座っていた三人組の会話が、彼女もまた私と同じくふさぎこんでいたために直接私の耳へと入ってきた。その三人組は話を聞く限り、娘と息子、さらにその母という関係性であったものの、娘も息子もとうに三十を越えており、言うまでもなく、その母もそれなりの年齢に至っているわけであるが、それと同時に実の父―その母からすれば夫になるわけであるが、はすでに死んでおり、代わりといってはなんであるが、愛人ができたその母が、愛人に自分の財産を譲るという話を二人の前で如何にその愛人が信用できる人間であるかを語り、猛反対を受けている時のことを思い出した。 そこで行われていたその母の、愛人がいかに信用できないかがよくわかるその話の、リアリティというものがこの『りすん』という小説の持つリアリティと同等のレベルを持っていること―その意味でこの小説が全きの通俗性にまみれているのではあるが、を感じさせられた。そこにあるリアリティはよくできた「お話」であって、その「お話性」がゆえにまた成功してるとも、また失敗しているともいえる作品である。少なくともここで私が言わなければならないのは、前作『アッサテの人』よりもその思想性がゆえに小説としての質が低いということである。小説に必要なのは思想ではなく、フィクショなるなリアリティなのである。
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兄妹同然に育った2人。 血は繋がっていないが兄を慕う妹。 兄も、病気の妹をかわいがる。 無菌室を「宇宙部屋」と呼ぶなど 2人の中で交わされる会話が リズミカルで面白い。
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「アサッテの人」読んでからのほうがよさそう。 そうでもないかな、たまたま順々に読んでたので「前作」部分の所もついて…いけたような気が。どうか。 いいアサッテしてるよ! ポンパ! 普段文字とかはあまり書かないけど こうやってレビューに向かう、と頭の中で、誰か第三者を想定して言葉...
「アサッテの人」読んでからのほうがよさそう。 そうでもないかな、たまたま順々に読んでたので「前作」部分の所もついて…いけたような気が。どうか。 いいアサッテしてるよ! ポンパ! 普段文字とかはあまり書かないけど こうやってレビューに向かう、と頭の中で、誰か第三者を想定して言葉を綴っていったりとか。 そうじゃなくても、たまに「意識しちゃって」何か考えちゃってるとき…「空青いなー」と頭の中で日本語で考えたらそれと同時に「ああ空青いって言葉を考えたなぁ」とかなんかそういう時のほわやとした感じ、をなんとなく感じれたような気がして面白かった 劇中劇が観客、舞台、舞台内の舞台、レイヤー三枚重ねてある としたら。 りすんは、レイヤー二枚なんだけど実際にはない縦のレイヤーが乗算かスクリーンでかかってるような、不思議な感じ。 最後の宇宙部屋のあたりでアサッテにふりきられて取り残されましたけどね
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「あさって」な会話だけで小説として成立させるには〜「しぇけなべいべな」で始まり,たかしとあさこという二人の会話は「」(かぎかっこ)から解放される〜文学的取組み・・・人間の会話だけで小説が成り立つかという実験・・・まあ何とかなりそうですけど。言い訳じみた会話が挟まって(まあ,それも...
「あさって」な会話だけで小説として成立させるには〜「しぇけなべいべな」で始まり,たかしとあさこという二人の会話は「」(かぎかっこ)から解放される〜文学的取組み・・・人間の会話だけで小説が成り立つかという実験・・・まあ何とかなりそうですけど。言い訳じみた会話が挟まって(まあ,それも実験),数奇な生い立ちと関係がある『文学』
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芥川賞(だよね?)だなぁ、という本。っていっても、受賞本はこれじゃあないけど。私は私で楽しめた。病気持ちの妹と血のつながらないお兄さんとのやりとりという1つのベタなお話が流れているんだけど、そうじゃなくってもう1つ大事な筋が、、、でも、そのもう1つの筋がとても不思議で、理解するの...
芥川賞(だよね?)だなぁ、という本。っていっても、受賞本はこれじゃあないけど。私は私で楽しめた。病気持ちの妹と血のつながらないお兄さんとのやりとりという1つのベタなお話が流れているんだけど、そうじゃなくってもう1つ大事な筋が、、、でも、そのもう1つの筋がとても不思議で、理解するのに大変なのかもしれないから、最初のベタな話の流れに乗ったのであった。
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