河合隼雄著作集 第Ⅱ期(9) の商品レビュー
『青春の夢と遊び』(1994年、岩波書店)および『中年クライシス』(1993年、朝日新聞社)のほか、『老いのみち』(1991年、読売新聞社)を抄録しています。 かつて心理学では、誕生から青年期までの心理的発展において人びとが出会わなければならない課題をあつかい、それ以降の年代の...
『青春の夢と遊び』(1994年、岩波書店)および『中年クライシス』(1993年、朝日新聞社)のほか、『老いのみち』(1991年、読売新聞社)を抄録しています。 かつて心理学では、誕生から青年期までの心理的発展において人びとが出会わなければならない課題をあつかい、それ以降の年代の人びとの心理を考察の対象としてきませんでした。こうした状況に変化をもたらしたのがユングだと著者はいいます。ユングは、人生の後半において「魂」の問題に直面する人びとが存在することに注意を向けたのです。 しかし著者は、現代における社会の変化によって、青年や中年、老年といった時期ごとに、それぞれの心理的な課題を区分することができなくなっていると主張します。青年の問題は中年や老年に入っても生きつづけ、他方で中年や老年の問題にとりつかれてしまう青年も存在しているのです。本書に収められた論考は、こうしたライフ・サイクルの多様性を踏まえながらも、文学作品などを具体例として参照しながら青年期以降の心理的な課題の諸相について考察がおこなわれています。
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