歌謡曲って何だろう の商品レビュー
歌は世につれ、世は歌につれ。一時期、音盤。いわゆるレコードの整理に没頭したことがあって、このキャッチフレーズを実感したことがあった。 美空ひばりは日本の戦後と高度経済成長を背景に出現、その終焉とともに一時代を画したとされる。『歌謡曲って何だろう』は作詞家・阿久 悠なりの、「自...
歌は世につれ、世は歌につれ。一時期、音盤。いわゆるレコードの整理に没頭したことがあって、このキャッチフレーズを実感したことがあった。 美空ひばりは日本の戦後と高度経済成長を背景に出現、その終焉とともに一時代を画したとされる。『歌謡曲って何だろう』は作詞家・阿久 悠なりの、「自らが感じとったところの歌謡史」を提示する。 歌謡曲への理解、作詞家としての取材の姿勢、ヒット曲と歌手の裏話。その世界に生きる人ならではの、情報量である。 「旅情」。客車の窓があいた時代と密閉された時代で、旅のスタイル、旅人の意識、見送りにゆく人の心情。それらが、大いに変化したと、説く。歌のなかで「女」が長いあいだ主題であったのを、「女性」を主題にしようとして苦悶した話も、なるほどと思わせる。 「別れ話は女性の方から持ち出す」のに抗して、尾崎紀世彦『また逢う日まで』は「ふたり同時」が「新しいところ」、山本リンダ「ぼやぼやしてたら、私は誰かのいいこになっちゃうよ」は、「恫喝する女性が現実の近くにいたということ」と、披瀝する。 紅白歌合戦の視聴率が80%を記録した時代があった。歌謡曲、されど歌謡曲である。
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