樹の声 海の声 2 第一部 下 の商品レビュー

辻邦生(著者)

2021/08/22

咲耶は、母が少女時代を送った北海道の忍路に滞在し、ニシン漁を営む人びとの暮らしを間近で目にしたことで、自然のなかで精いっぱいに働いている彼らの力強さに強い印象を受けます。

その後、学習院を退学した咲耶は、父親の病気を契機に、川路利明と結婚することになります。しかし、二人はなかなか夫婦として打ち解けることができません。やがて病気になった彼女の入院中に川路が女中に手を付けたことで、咲耶の心は傷つけられ、別居生活を送ることになります。

武者小路実篤の「新しい村」の試みなど同時代の出来事が物語のなかに織り込まれていたり、作家をはじめ著名人がさりげなく登場したりしているのも、たのしんで読むことができました。