品質コストの管理会計 の商品レビュー
品質コストとは、企業が品質向上にかけているアクティビティを、 ◆ Input ・ 予防コスト(教育やプロセス改善など) ・ 評価コスト(テストなど) と ◆ Output ・ 内部失敗コスト(市場導入前の欠陥対応など) ・ 外部失敗コスト(市場導入後の欠陥対応など...
品質コストとは、企業が品質向上にかけているアクティビティを、 ◆ Input ・ 予防コスト(教育やプロセス改善など) ・ 評価コスト(テストなど) と ◆ Output ・ 内部失敗コスト(市場導入前の欠陥対応など) ・ 外部失敗コスト(市場導入後の欠陥対応など) に分けて集計し、つまりは品質向上アクティビティをお金に換算し、比較できるようにしているところがポイントです。 品質コストには、2つのコストモデルがあり、TQMの観点では、最も品質を上げた状態が最少のコストになるというコストモデルを採用していたので、重視されてきませんでした(Demingは「品質コスト分析を行うな。製品を"正しく"生産するために、単に"川上"に投資せよ。」と述べています)。 他にも、例えば、久米均は、「企業経営にあたっては目に見えないものが目に見えるものと同様に重要であることが少なくなく、目に見えるものだけで物事を考えることは経営を誤ることにもなりかねないのである。」という見解を1984年に示しています。 つまり、ブランド力の低下といった目に見えないコストがあるので数値にとらわれて経営活動を見誤るよりも、品質第一で失敗コストの極小化を狙ったほうがよいという主張です。 ところが現在、何故、品質コストがまた企業で使われだしたのか? 本書はその点について、上場会社への1,043社への質問調査票の結果(366通の回収)を分析し明らかにしていきます。 結論としては、パフォーマンスフロンティアに達してしまった企業においては財務的な視点で品質管理活動への投資額を決定しないと過剰もしくは過小な資源投入が起きやすいからということでした。 パフォーマンス・フロンティアとは、複数の業績次元において、特定の技術、設備、生産方式などを所与とした時に実現可能な最大の業績水準の組合せを意味するものだそうです。 要するに改善が進んでいないうちは、個別最適をやっていても効果が出るのですが、そのうちに、個別最適では効果が出なくなってきますよね。それがパフォーマンス・フロンティアで、複数の部門活動をトレードオフしながら活動を進めないとならないのですが、その時に品質コストといった共通の全社的な指標が役に立つというのです。 他にも色々と勉強になってとても良い本でした。
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管理会計領域における筆者の研究成果をまとめたもの。品質コストという観点から日本の品質管理の現状や課題について一定の知見を提供する。
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