音楽その発想と展開 の商品レビュー
著者はピアノ教育者向けの雑誌『ムジカノーヴァ』の初代編集長を勤めた音楽評論家。本書は70年台半ば同誌に連載された。「音楽はすべての芸術のなかで、人間の潜在意識の最も深い層から発し、人間の情緒の最も古い層を受け継いで現代に至っている」とフロイト的に語る。そしてその芸術昇華は高度な知...
著者はピアノ教育者向けの雑誌『ムジカノーヴァ』の初代編集長を勤めた音楽評論家。本書は70年台半ば同誌に連載された。「音楽はすべての芸術のなかで、人間の潜在意識の最も深い層から発し、人間の情緒の最も古い層を受け継いで現代に至っている」とフロイト的に語る。そしてその芸術昇華は高度な知的批判、反省や思想によって造形物となる。初めにリズムありき、とも著者はい言う。「原始のままの本能に支えられた作曲家固有のリズム」これが音楽の違いなのだ。バッハ、モーツアルト、ベートベンらの創作の内面を丹念に読み込み、真の創造的行為とは何かに誠実に迫ろうとする。凡百な作品解釈ではなく、音楽を介した遠人愛にあふれた本である。
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