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ケンたま の商品レビュー

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2009/10/04

「フリーター時代 5〜10分の短い休憩時間の中 パラパラと読み切れるマンガは素晴らしいな〜と思っていました。そんなパラパラ感で楽しんでもらえたらうれしいです。」(作者あとがきより) そ、そう言われちゃもう何ひとつ文句は言えめえ! とても奇妙なマンガだ。 客観的に端的に言い切るの...

「フリーター時代 5〜10分の短い休憩時間の中 パラパラと読み切れるマンガは素晴らしいな〜と思っていました。そんなパラパラ感で楽しんでもらえたらうれしいです。」(作者あとがきより) そ、そう言われちゃもう何ひとつ文句は言えめえ! とても奇妙なマンガだ。 客観的に端的に言い切るのなら、失敗作ということになると思う。作者のことばに偽りなしで、爆発的に大ゴマを多用して本当に読み込もうとしても1巻を5、10分でパラパラと読めちゃう程度の薄い内容。仮に一般的なマンガを純文にたとえれば、ここではあかほりラノベのような物凄い省略が横行している。少なくとも既成のマンガの価値観としてはそれは作者が言うほどにはあんまり素晴らしいものではないだろう。 しかし案外マンガとはその程度のものかもしれん、とも思わされるのはこの異様に中身が薄く説明もろくにない1巻の中で、それなりに物語が描かれているところだ。激しいアクションとちょっとした萌え、クスリとくる笑い、友情、解き明かされる謎、ゆらぐ価値と回帰、そういった要素は(従来あまたのマンガで用いられた「記号」を多用して読者に簡易な理解を促しているにしても)たしかに詰まっている。だから一概に第一印象のままに「内容がない」と切って捨てるのも間違いには違いない。扱いにまったく困るマンガなのだ。 少なくとも絵は抜群に上手く魅力的で、一部の描写に至っては実験的でさえある(「大声を食う」クリーチャーの絵的にミもフタもない説得力!)。 あと常時欲情しているベタベタお姉さんと照れながらすげなく扱う小学生男子という組み合わせは、まあ、なんかいいよね、うん。 もともと作者は少年シリウス漫画賞出身の生え抜き(たぶん)で、受賞作もその後掲載された短編も短編の中に詰め込めるだけ詰め込んでかなりゴチャゴチャした、正直「その設定いらないだろ?」という言葉が口をついて出るような作風だった。そして描いた新連載がこれとは、なんと極端な男。 うまいこと中庸を突きさえすればいくらでもブレイクできる逸材だと思うのだが、それは作者の個性を殺すことになるのだろうか? 何とも言えん不思議な作家である。

Posted byブクログ