演劇の歴史 の商品レビュー
宗教的儀式からはじまったギリシア演劇から、現代の広義的なところによる「演劇」に至るまでの流れが読める。取り上げる作品はフランス語の演劇を中心としたとはいうものの、シェイクスピア等の著名な作家は切り離そうにも不可能なので、素人がヨーロッパにおける演劇の流れを知るには十分だったではな...
宗教的儀式からはじまったギリシア演劇から、現代の広義的なところによる「演劇」に至るまでの流れが読める。取り上げる作品はフランス語の演劇を中心としたとはいうものの、シェイクスピア等の著名な作家は切り離そうにも不可能なので、素人がヨーロッパにおける演劇の流れを知るには十分だったではないだろうか。 流れの途中で多くの作品が紹介されているので、さながら演劇目録のようにも読める。巻末に『人名・劇団・グループ』『作品』『事項』の3種の索引がついているのもありがたい。著者が「この本が手軽で使いやすい手引き書となることを願っています」と言っているが、まったくその通りに使えそうである。 第七章の不条理劇に関する項が興味深かった。 著者はベケットの作品を取りあげて『「言葉が何を意味しているのか」ではなく、「自分のために言葉が何を語っているのか」と自問するよう観客に強いる』と述べるが、不条理劇に対して感じていた漠然とした感覚が言語化された気がする。 現代における演出家と同義の役割が出始めたのはせいぜいこの一世紀とある。演出家という役割が確立される以前はそもそもそれを上演する際に書かれた脚本の外で演出をする、という概念が存在しなかったという。 あまり気にしたことがなかった。古典的な作品と現代的な作品それぞれの戯曲を読み比べてみると、確かにその部分を感じ取ることができる。現代において演出が仕事をしないことはなく、完全に抜け落ちていた視点だった。
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