「教育の崩壊」という嘘 の商品レビュー
村上龍という作家がなぜ子どもの教育に興味を持ちだしたのかはよく分かりません。でも、村上春樹にしても坂本龍一にしてもそうですが、たぶん40才を過ぎるころから、何か社会の役に立つことはできないのだろうかと考え出されているように思います。著者はまず中学生1600人対象にアンケートをとっ...
村上龍という作家がなぜ子どもの教育に興味を持ちだしたのかはよく分かりません。でも、村上春樹にしても坂本龍一にしてもそうですが、たぶん40才を過ぎるころから、何か社会の役に立つことはできないのだろうかと考え出されているように思います。著者はまず中学生1600人対象にアンケートをとっています。その回答を読んでいくなかで本書のタイトルを思いつかれたそうです。つまり、見えてきたことは大半の子どもたちが昔とそれほど変わりなく、わりと真面目に自分の人生について考えているのです。それは私自身いまの仕事をしていて感じることでもあります。ただ本書のなかで何度となく語られていますが、子どもたちが2極分化していく方向にあるのは間違いなさそうです。それは、経済的に裕福な家庭では私立中高などに子どもを入学させそこでしっかりした教育を身につけさせる。それでまたその子どもたちもわりと裕福な家庭を築いていく。それに対して貧しい家庭では公立しか仕方なく、あまり質の高い教育を受けさせることができない。やる気もなくなりさらに悪い方向へ向く。これは特に東京をはじめとする都市部に多い傾向のようです。このことは洛南高校の先生が講演会でおっしゃっていたこととも一致します。これから確かに海外からの低賃金の労働力が入ってきたり、何でもコンピュータを使ったり機械化されるようになると、上でそれを使いこなす、あるいはその機械やシステムを作る優秀な人材は必要だけれども、中間層で働く人たちが不要になってきます。そうするとある程度の大学を出ていたとしても大した仕事に就けないということになってしまう。いや、仕事にはそれぞれ価値はあるのだけれど、一応大学を出ているということでその価値を認めたがらない人が増えるのだと思います。それはきっと不幸です。こんなはずじゃなかったのにと思ってずっと生きていくのは。だからといって僕はすごく悲観的になっているわけではありません。仕事の種類というのは実はこれからどんどん変わっていくと思われます。というか、そういう雇用を増やしていく方向に政治は動いていくのでしょう(他人事ではないのですが)。たとえば、すでに増えてきている福祉関係、心や健康に関わるもの。それから環境に関わるようなもの。NGOとかNPOとか言われるようなもの。だから子どもたちにはまずどういう生き方があるのか、どんな職業があるのか、という具体例を話していってあげる必要があるのだと思います。ぜひそういう機会を私たちもつくっていきたいと考えています。本書のアンケートに「あなたにとって希望とは何ですか?」という質問があります。そのうちの1つの回答「あきらめたときに消えるもの」。希望を捨てずにがんばりたいものです。
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10年前の書籍なので現状は少し違うでしょうが、どのトピックも考えさせてくれました。中学生1600人アンケートは一読の価値あり。自由記述の偉大さがわかる。
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筆者は今の教育の崩壊の理由は「権威のコントロール」を失ったからだという。 そういった一面も確かにあるだろうが、それが全てではない。 この本も突っ込みどころ満載であった。
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