1,800円以上の注文で送料無料

反差別論 無根拠性の逆説 の商品レビュー

3

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2020/01/05

著者は、池田清彦に受け継がれた「構造主義生物学」を提唱したことで知られる生物学者ですが、『反科学論』(ちくま学芸文庫)や『あなたにとって科学とは何か―市民のための科学批判』(みすず書房)などで科学批判をおこなっていることでも知られています。本書は、日本社会における種々の差別につい...

著者は、池田清彦に受け継がれた「構造主義生物学」を提唱したことで知られる生物学者ですが、『反科学論』(ちくま学芸文庫)や『あなたにとって科学とは何か―市民のための科学批判』(みすず書房)などで科学批判をおこなっていることでも知られています。本書は、日本社会における種々の差別について考察をおこなっています。 著者は、「差別の増幅」ということばで、被差別者が他のカテゴリーに属する被差別者を見いだすことで差別者との同化を図ろうとする問題に切り込みます。また、著者自身が依拠する「構造主義」の観点から差別の恣意性を指摘するとともに、既存の差別構造を含んだ社会の付置を組み替えることの必要性を論じています。 すこし気になったのは、著者がオーストラリアに長年暮らしたという体験にもとづいて、「日本人」の後進性を指摘するというしかたで議論が進められていることです。わたくしとしては、こうしたテーマをあつかうさいに啓蒙的なスタンスが採用されることを一概に否定するつもりはないのですが、本書における「日本人」ということばの使いかたには、著者が対抗しようとしているものの身振りを反復してしまっているような印象がぬぐえず、どうしても引っかかるものを感じてしまいます。

Posted byブクログ