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中世の覚醒 の商品レビュー

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5件のお客様レビュー

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2015/11/21

中世ヨーロッパが暗黒時代からルネサンスを以って近代へ変容する様は人類史上の奇跡といっていい。ヨーロッパを形成する思想は疑いようもなくキリスト教に根差したものだが、そこにアリストテレスの知的再発見を伴い、宗教との棲み分けと補正を伴い、科学的進歩と文化的成熟を遂げた。本書はその歴史と...

中世ヨーロッパが暗黒時代からルネサンスを以って近代へ変容する様は人類史上の奇跡といっていい。ヨーロッパを形成する思想は疑いようもなくキリスト教に根差したものだが、そこにアリストテレスの知的再発見を伴い、宗教との棲み分けと補正を伴い、科学的進歩と文化的成熟を遂げた。本書はその歴史とプロセスを描き検証する。 とはいえ難解な本である。。。序盤のムスリムとの接触によるアリストテレスの再発見はダイナミズムを感じさせるが、全体を通して賢人アリストテレスがもたらした役割がいまいち読み解けなかった。トマスがアリストテレスの思考様式を再研磨し、オッカムが思考の剃刀により信仰と理性を断絶し、中世の知の覚醒をもたらした、ということか。 近くに再読してきちんと理解したい。。。

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2012/06/20

 万学の祖とまでいわれる、アリストテレス。その著作が西ヨーロッパに再登場してからというもの、後世いかなる発見とも異なるインパクトもって社会の文化、制度に大きな、革命的な変化を与えることになった。    近代哲学の祖である。フランシス・ベーコン、ルネ・デカルトが科学革命を宣言するお...

 万学の祖とまでいわれる、アリストテレス。その著作が西ヨーロッパに再登場してからというもの、後世いかなる発見とも異なるインパクトもって社会の文化、制度に大きな、革命的な変化を与えることになった。    近代哲学の祖である。フランシス・ベーコン、ルネ・デカルトが科学革命を宣言するおよそ400年以上前から、近代的みなしうる合理的、現実主義的、経験主義的思想が席巻し、文化戦争の火付け役となっていた。    近代より前のこの「中世ルネサンス」こそ西ヨーロッパを覚醒したことによると唯一の転換点であったと認識してそう大過ないと思う。こうした見解はいまだ広く認知された歴史的パースペクティブとなってはいないものの、なるほど中世の覚醒とは、アリストテレス科学の受容と排斥をめぐるキリスト教徒との論争によってもたらされたものであり、知の歴史を決定的に方向付けた重大な出来事であったということがわかる。  結論からいえば、つまり神学は信仰と理性の調和を達成し得なかった。アリストテレス的キリスト教は二つの異なる宇宙観の対立を解決することはできなかったが、両者の間に創造的な緊張をもたらした。アリストテレスの伝統が廃れるにつれて、西ヨーロッパの文化はいつしか、論理的に思考する頭という理想と、情熱的に追求する心という理想に、しだいに引き裂かれることになった。

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2011/11/28

 素晴らしい。イスラーム文化圏との接触により欧州で巻き起こった通称「十二世紀ルネサンス」。そこで再発見されたアリストテレス哲学が当時の哲学・神学、ひいては中世文化全体に与えた影響を時に俯瞰的に、時に微細に記しています。  ギリシャ哲学が再発見され、知的格闘を経てヨーロッパの文化...

 素晴らしい。イスラーム文化圏との接触により欧州で巻き起こった通称「十二世紀ルネサンス」。そこで再発見されたアリストテレス哲学が当時の哲学・神学、ひいては中世文化全体に与えた影響を時に俯瞰的に、時に微細に記しています。  ギリシャ哲学が再発見され、知的格闘を経てヨーロッパの文化圏に取り込まれてゆくプロセスには興奮すること請け合い。著者の筆は明晰かつ流麗であり、ページをめくる手を休めることが出来ません。上質な翻訳も読みやすさに一役買っています。  古代哲学、中世神学、そしてルネサンス期の科学革命。一見するとばらばらにしか思えないこれらが、アリストテレス哲学という糸で繋がっていることがよくわかる一冊です。また、中世(この用語も曖昧ですが)はキリスト教が支配する知的暗黒時代だった、という通念を見事にぶち壊してもくれるでしょう。  なお、四〜五世紀、東ローマ帝国で脈々と受け継がれていたギリシャ哲学がいかにして失われたか、という点にも一章を裂いております。ここだけでも大変にスリリングなので是非ご一読を。該当章のタイトル「レディ・フィロソフィーの殺人」はミステリめいていてちょっと素敵ですね。  類書で省略されがちな参考文献と注釈も完備。そのうえ文献の邦訳も網羅しているという仕事ぶりには頭が下がります。この分野に興味のある方はもちろん、とりあえず歴史が好きという方にも絶対のお勧めといえるでしょう。

Posted byブクログ

2011/02/12

ギリシア哲学の遺産が、一時期、失われ、アラビア哲学を経由して再度、中世の欧州で発見されていくというプロセスがかなり詳細に記述されていて、極めてドラマチック、ドキュメンタリー的に描かれている。神学と科学の乖離を必要以上に強調する考え方に異議申立てを行っている。 もう一つ、個人的に...

ギリシア哲学の遺産が、一時期、失われ、アラビア哲学を経由して再度、中世の欧州で発見されていくというプロセスがかなり詳細に記述されていて、極めてドラマチック、ドキュメンタリー的に描かれている。神学と科学の乖離を必要以上に強調する考え方に異議申立てを行っている。 もう一つ、個人的には、殊更に強調されがちなイスラームとキリスト教文明の違いのようなことに対する潜在的な異議申立てにもなっている。著者はそれほど強調しているわけではないが。両者は双子の文明なのである。一神教として同じ神を讃える啓典の民なのである。

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2009/10/07

 世界史の授業で、中世のあとに突然ルネッサンスが始まって、それまで神への信仰が中心だった世界観から、人間中心のものの考え方に180度転換して、地球は太陽の周りをぐるぐる廻り、コロンブスは新大陸を発見し、マルティン・ルターは活版印刷で聖書を誰でも読めるものにした、と習いましたよね。...

 世界史の授業で、中世のあとに突然ルネッサンスが始まって、それまで神への信仰が中心だった世界観から、人間中心のものの考え方に180度転換して、地球は太陽の周りをぐるぐる廻り、コロンブスは新大陸を発見し、マルティン・ルターは活版印刷で聖書を誰でも読めるものにした、と習いましたよね。  でも、なんだか変だと思いませんでしたか。なんで「暗黒の中世」が終わってばら色の「ルネッサ〜ンス!」が突然始まるのか。その謎が、この本を読めばわかるんですね〜。いや、ものすごく面白い本でした。ほんと、買ってよかった。最初、新聞広告で「中世の覚醒」なんて、かっこいい!と「中世」って言葉がタイトルに入ってるというだけで「欲しい本」リストに入れていたんですが、いざ本屋で手にとって見ると難解な内容っぽかったんでいったん怖気づいたんですが、「本棚に飾っておくだけでもいいや」と思って買って、途中で投げ出すのを覚悟で読み始めたら、思いのほか読みやすくて面白かったので、うれしい誤算としかいいようがありません。  さて、内容ですが簡単に説明すると「12世紀にムスリムの支配から解放されたスペインで見つかった、アリストテレスの知に初めて触れた西ヨーロッパの知識人たちが、このことを知ったために『信仰と理性』の問題についててんやわんやした」ということが書かれています(ざっくりとまとめすぎですが)。  そこに登場する人物は、さながら歴代異端ヒーロー列伝と言ってもいいくらいで、かっこいいです。「異端」というと、我々日本人はすぐ「悪魔崇拝」だとかドラキュラだとか思い浮かべますが(え?私だけ?)、実はローマカソリックに都合の悪いことを説いて回った修道士や神学者がほとんどだったようですね。本書には「異端オブ・ザ・異端」のカタリ派も登場しますし、教え子のエロイーズちゃん(16歳くらい)と「いけないお勉強」に耽って、妊娠までさせてしまったため彼女の親戚から寝込みを襲われて、大事なアソコをちょん切られてしまったアベラールも出てきます。(どんなエロゲのバッドエンドだよ!って思いましたが、アベラールは別にこれで死んでしまったわけではありません)。  そのほか、ロジャー・ベーコン、アウグストゥス・マグヌス、トマス・アクィナス、ウィリアム・オッカムなんていうどこかで聞き覚えのある人たちも登場します。  キリスト教の「三位一体」というのは、汎神論を伝統的に受け入れている日本人である私には、どうもよくわからない概念で、なんでそんなことにこだわるのかすらよく理解できないんですが、逆に言うと「そこのところ」にずっと悩み続けたから西洋文明というのは今日のような発達を遂げたのかな、と思います。でもそれは、西洋のキリスト教世界ではとっくに忘れられていた古代の哲学者アリストテレスの膨大な著書の写本が、ムスリム(イスラム世界)によって、守られ研究され、翻訳されたものに出会えたからこそ芽生えたもので、そのことを西洋キリスト教世界が黙っていたというのは「ちょっとずるい」と思いました。  今回「神学とアリストテレス哲学」というまったくの未知の分野の本と出合ったわけですが、私にとって新しい世界が拓けました。読んでよかった。秋の夜長にオススメの一冊です。

Posted byブクログ