法と社会システム の商品レビュー
ルーマンの論文集"Soziologische Aufklärung"より、4つの論文が訳出されている。全体として、因果関係の推論と機能的方法の区別、理性啓蒙と社会学的啓蒙の対置、法の領域における目的―手段図式に対する条件プログラムの登場など、社会や法秩序を語る...
ルーマンの論文集"Soziologische Aufklärung"より、4つの論文が訳出されている。全体として、因果関係の推論と機能的方法の区別、理性啓蒙と社会学的啓蒙の対置、法の領域における目的―手段図式に対する条件プログラムの登場など、社会や法秩序を語る際に用いられてきた西洋の伝統的なカテゴリーを批判的に吟味することにルーマンの関心があると思われる。とりわけ、第四論文「実定法とイデオロギー」は、『制度としての基本権』や『法社会学』など、一連のルーマンの法社会学的研究に属する論文だが、法の実定化という現象については、プログラムの可変性によって価値の安定性を保障することに寄与しているという理解が示される。これをルーマンは「静」が「動」に基礎づけられるというありそうにない事態として表現しているが、この点は、近代法秩序を進化の所産として捉えるルーマンの基本的な理解を端的に表している。その他にも、システム/環境の区別の理論的重要性、構造―機能的システム理論から機能―構造的システム理論への転換など、ルーマンの基本的な主張が素描されている。
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