日本の歴史(21) の商品レビュー
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1974年刊行。著者は東京経済大学教授。市民と権力側の対立構造・闘争。これ自体は歴史構成の一面であるが、必要不可欠な視座でもある。本書の叙述は、西南戦争後から日清戦争開始までだが、その中でも、自由民権運動、明治14年政変後の自由党弾圧、秩父事件に多くの頁を割いている。のみならず、北海道開拓における民衆の役割・苦闘にも触れており、これが特徴的。些か、共産主義的用語を多用する点や民衆闘争の感傷的ないし過大評価は散見されるが、引用も多く、昨今の通史書では触れられない事実を指摘。なお、佐々木高行日記の引用が多い。 余り聞いたことがなかったが、本書で触れる北海道開拓による未回収・放置遺骨も、硫黄島や南方諸島等の戦時中のそれと同じ価値を持つと思いたいところ。彼らも精一杯、国難に立ち向かったのであるから…。
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西南戦争の後、自由民権運動の頃まで、高校までの日本史では5行くらいで片付けられてしまうところ。明治維新の英雄時代は、西郷や大久保、木戸の死を持って終わり、伊藤博文や山県が、国家としての器作りに苦闘する頃の物語である。 いろいろな人物が多層的に出てきて楽しいし、色川大吉の踊るような...
西南戦争の後、自由民権運動の頃まで、高校までの日本史では5行くらいで片付けられてしまうところ。明治維新の英雄時代は、西郷や大久保、木戸の死を持って終わり、伊藤博文や山県が、国家としての器作りに苦闘する頃の物語である。 いろいろな人物が多層的に出てきて楽しいし、色川大吉の踊るような文体も興味深いが、民衆を主軸に据えて、政府要人を時代の趨勢に無理解であった戯画的な権力者として描く手法は、今では胡散臭いと思う読者が大半であろう。民衆に関わる文献はどこまで正確なものなのか、あまたの民衆の内、なぜここで彼らだけが取り上げられているのか、結局、そこは色川の独断、良くいって色眼鏡に彩られたものではないのか、と思ってしまう。
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