日本人の阿闍世コンプレックス の商品レビュー
長谷川伸の『瞼の母』には、理想化された母への一体感と、それを裏切られたことへの怨み、そして怨みを超えた許しの通いあいというテーマが描かれています。著者は、ここに見られる日本人特有の深層心理を解明したものとして、古沢平作の「阿闍世コンプレックス」の考えを参照します。 フロイトの「...
長谷川伸の『瞼の母』には、理想化された母への一体感と、それを裏切られたことへの怨み、そして怨みを超えた許しの通いあいというテーマが描かれています。著者は、ここに見られる日本人特有の深層心理を解明したものとして、古沢平作の「阿闍世コンプレックス」の考えを参照します。 フロイトの「エディプス・コンプレックス」が、父性社会であるヨーロッパの深層心理の構造を表わしているのに対して、古沢から著者が引き継いだ「阿闍世コンプレックス」は、日本的な「甘え」、「日本的マゾヒズム」、そして日本の母性社会的性格と緊密に結びついていることが、順次説明されていきます。 さらに著者は、伝統的な「阿闍世コンプレックス」を受け継ぎながら、新しい社会の到来によって苦しみを味わっている現代日本人の心理を解き明かそうとしています。 本質主義的な日本文化論に陥っているきらいもありますが、それなりに興味深く感じたところもありました。とくにベネディクト以来の「恥の文化」の考え方に対して、自分の犯した罪を寛容に許されることによって、内面的で自発的な罪責観が生じるということを重視しているところなどは、おもしろいと思いました。
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一世を風靡した心理学書。 西洋父系社会に対する、日本母系社会。 「瞼の母」という理想像を社会が共有している故に、怨念の母となる。 今、読んだ方が面白い気がする。当時よりも。
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