ナイティンゲール伝 他一篇 の商品レビュー
ストレイチーは「ヴィクトリア朝の著名人たち」という題の元、四人の著名人の伝記を書いた。それぞれ、ゴードン将軍、マニング枢機卿、トマス・アーノルド、そしてここで紹介するフローレンス・ナイティンゲールである。(なおリンクを貼ってある岩波文庫には、ナイティンゲールの他、トマス・アーノ...
ストレイチーは「ヴィクトリア朝の著名人たち」という題の元、四人の著名人の伝記を書いた。それぞれ、ゴードン将軍、マニング枢機卿、トマス・アーノルド、そしてここで紹介するフローレンス・ナイティンゲールである。(なおリンクを貼ってある岩波文庫には、ナイティンゲールの他、トマス・アーノルドの伝記が収録されている) 歴史を勉強した人ならばナイティンゲールという人物を聞いたことはあるであろう。彼女はクリミア戦争において看護婦として活躍し、その後もイギリスの医療制度の改善に奮闘し、最終的にはイギリスは勿論のこと、世界中でその名前がとどろき、医療の発展に大きく寄与した。そしてその「白衣の天使」と謳われるその人物の伝記が書き上げられた。 普通の人間なら「白衣の天使」と聞けば、心優しそうな聖母を連想するであろうが、伝記を通して浮かび上がるナイティンゲールの人物像はそのようなものではない。情熱に取りつかれており、自我が強く、目的のためなら敵を嚇すことすらした。しかしながらそのこと自体はそこまで驚くものではない。単に心優しい人間が何らかの改革を行うことは出来ないからである。 改革を行うにあたっては人間関係の制圧、ショーペンハウアーの述べる「意志」の角力場における勝利という政治力がどうしても必要である。この伝記において書かれている内容が実にその証拠となっている。特にナイティンゲールは女性であり、今以上に女性差別は強く、男性に勝るのに必要であったその意志は並々ならぬものであったことは想像に難くない。「風と共に去りぬ」において描かれるスカーレットと同様に他を押しのけて天へと延びようとする樹が、この伝記を通して存分に描かれているのだ。 晩年になると家にこもり思索活動をするようになり、その面ではそこまで天才的なものではなかったというのも個人的には印象に残った。いや、天才的ではなかったというより、情熱的ではあったが冷静さを欠いていた、というべきか。ストレイチーはそのことを嘲笑と畏敬の織り交ざった念をこめて書き上げている。 最後に伝記の文学性についてだが、十分にあると私は評価する。事実との乖離については何とも言えないが、支離滅裂なところはなく、変に作者の主観を織り交ぜたりもしておらず、バランスがとれており何の問題もなく読める。格別に優れたところはないが、短いこともあり、読み応えのある作品となっている。
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佐藤優・佐高信の共著『世界と闘う「読書術」――思想を鍛える1000冊』に本書が紹介されていたことがきっかけで読み始めた。 ナイチンゲールと仕事をしたくないというのが怠け者の私の感想である。 有能だが、休むことを知らない上司、というふうに想像しながら読み進めた。 大事な時期に休んで...
佐藤優・佐高信の共著『世界と闘う「読書術」――思想を鍛える1000冊』に本書が紹介されていたことがきっかけで読み始めた。 ナイチンゲールと仕事をしたくないというのが怠け者の私の感想である。 有能だが、休むことを知らない上司、というふうに想像しながら読み進めた。 大事な時期に休んでしまうことはもちろんよくないことと思うが、本書を読むと彼女にとってはどんなときでも休んではいけないと言っているようでゾクゾクする。 ナイチンゲールの伝記は子どものころに読み、非常に面白く、何度も読んだことを記憶している。子どもむけの伝記では、「白衣の天使」というキャッチフレーズで英雄的に描かれていた。(もっともクリミア戦争時の活動に焦点を当てていたからだと思うが・・・) 本書はクリミア戦争時の活動よりも、帰国後の活動について掘り下げている点が良い。 子ども用の伝記で「彼女はインクの汗と涙を流した(膨大な量の手紙を書いた)」と書いてあったような気がするのだが、本書によると、この手紙類は自分の部下等の悪口も書いてあったとは。 一日あれば読めてしまう文量であった。 また、他一編はざざっと読んだだけである。 --- 追記: ナイチンゲールのことを佐藤優・佐高信両氏は、上昇志向が高く、自己顕示欲が強い人物であったと著書に書いている。
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ナイティンゲールの激動の生涯を垣間見ることができた。彼女の仕事ぶり、女性らしい頑固さ、意志の強さ、そして仕事がどれだけできるか。自分が抱いていた、激烈なイメージと合っている部分が多々あり、興味深かった。
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天使であり悪魔でもある 人間的、あぁ人間的 パスカル氏に面食らって面食らって動けなくなるような 軟な女じゃございません。
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