カミと日本文化 の商品レビュー
神道を中心とする日本人の神信仰にかんするさまざまなテーマをあつかった論考をまとめた本です。 著者は、神道の歴史には他の宗教には見られない、顕著な特徴が存在すると主張します。それは、それぞれの時代において、さまzまな宗教や思想の影響を受け入れてきたということであり、しかも前の時代...
神道を中心とする日本人の神信仰にかんするさまざまなテーマをあつかった論考をまとめた本です。 著者は、神道の歴史には他の宗教には見られない、顕著な特徴が存在すると主張します。それは、それぞれの時代において、さまzまな宗教や思想の影響を受け入れてきたということであり、しかも前の時代の影響をすっかり払拭して、新しい時代の装飾を身にまとってきたということです。著者はこうした神道の特徴的なありかたを「着せ替え人形」と表現し、あるときは仏教、またあるときは儒教、さらにはキリスト教や国家神道の装飾も、身にまとってそのすがたを変えてきたのが、神道の歴史だったと著者はいいます。 従来の神道の研究においては、それぞれの装飾にばかり目が向けられてきたために、神道の内実を明らかにすることができなかったと著者は考えます。そして、日本の歴史を通じて神信仰に見られる特色として、上はきまったかたちをもたない遍満する力であり、ものを生み出す力、ものを繁栄させる力と考えられてきたという主張がなされます。さらに、そうした神の力は一定の境域に限定されたものであり、神が「クニ」を「シル」といういい回しに、そのような特徴が表現されていると論じられます。 ただし本書は、さまざまな機会に書かれた日本人の神信仰にかんする著者の文章をあつめた本であり、神概念についての著者の解釈が一貫して掘り下げて論じられているわけではありません。近松の『曾根崎心中』における神道・儒教・仏教などの影響を論じた文章や、本居宣長における古医学と国学の関係について論じた文章など、上述のテーマに対してやや周辺的な問題をあつかった文章も含まれています。
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