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わがアリランの歌 の商品レビュー

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2021/09/17

 著者は1920年1月、慶尚南道生まれ。1930年、10歳のとき、先に日本に渡った両親と兄・妹を追って日本に移住。依頼、納豆売りや映写技師、風呂屋の下働き、屑屋・仕切り屋などの職業を転々としながら、大井尋常夜学校、明徳中学校に通い、日本大学芸術科を卒業。本書は著者の出生から幼少期...

 著者は1920年1月、慶尚南道生まれ。1930年、10歳のとき、先に日本に渡った両親と兄・妹を追って日本に移住。依頼、納豆売りや映写技師、風呂屋の下働き、屑屋・仕切り屋などの職業を転々としながら、大井尋常夜学校、明徳中学校に通い、日本大学芸術科を卒業。本書は著者の出生から幼少期、日本での少年時代とイジメをきっかけとした民族意識への目覚め、日本での少年時代と文学的な出発を中心に、朝鮮独立を叫んだ1945年8月15日の記憶までを描く。  文学者との関わりという点では、張斗植や金史良、金聖珉との交流に加え、同人雑誌の統合で知り合った保高徳蔵の面影も描かれる。この時期の日本大学芸術科に多くの朝鮮人学生が通っていて、学科として作った同人誌にも作品を発表していたという話も興味深かった。とくに金史良との交流の部分は、短いけれども生き生きとした記述となっていて、金達寿の思いの強さをうかがわせる。著者が志賀直哉を読んで、「自分のことを小説に書いていいんだと思った」というエピソードは、マイノリティ作家の出発を考えるうえで、とても興味深かった。

Posted byブクログ