心にいどむ認知脳科学 の商品レビュー
脳科学の立場から心の働きを解明している認知脳科学について、興味深い例を多く紹介しながら解説している本です。 著者は、「心とは、脳のはたらきの一部分であって、知覚‐記憶‐意識の総体である」と定義しています。ただし、これは最終的な結論ではなく、心についての認知科学的な立場からアプロ...
脳科学の立場から心の働きを解明している認知脳科学について、興味深い例を多く紹介しながら解説している本です。 著者は、「心とは、脳のはたらきの一部分であって、知覚‐記憶‐意識の総体である」と定義しています。ただし、これは最終的な結論ではなく、心についての認知科学的な立場からアプローチするための仮説ないし第一次近似として理解するべきでしょう。本書ではこの仮説にしたがって、知覚、記憶、意識についての研究を紹介しています。 本書の前半では、知覚と記憶にかかわる「認知記憶システム」についての研究をとりあげ、知覚の特徴を分析する「特徴分析装置」を通して「記憶貯蔵庫」に記憶された内容が、「記憶制御装置」によって制御されるという、ボトム・アップ型のモデルが提出されています。一方で、われわれが心的なイメージを思い描くときにはトップ・ダウンのプロセスが生じていると考えられることから、著者は意識の仕組みは心的イメージの仕組みと類似しているという仮説を立て、トップ・ダウンのプロセスにおいてわれわれが自分の意識状態をモニタリングしており、これが自己意識の働きと考えられるのではないかという議論をおこなっています。 心の働きというとらえがたいものを、脳科学の分野における実験の成果と突きあわせを行ないながら仮説を形成していくプロセスが示されていて、この分野になじみのない読者にもおもしろさが伝わる内容になっているように感じました。
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「心とは、脳のはたらきの一部分であって、知覚―記憶―意識の総体である。」というのが本書における酒井さんの定義である。このことを説明するためにいろいろな実験結果を提示して脳と知覚―記憶―意識の関係を理解していこうとされる。特に心には記憶と学習が重要で、そのことと意識とを統一して理解...
「心とは、脳のはたらきの一部分であって、知覚―記憶―意識の総体である。」というのが本書における酒井さんの定義である。このことを説明するためにいろいろな実験結果を提示して脳と知覚―記憶―意識の関係を理解していこうとされる。特に心には記憶と学習が重要で、そのことと意識とを統一して理解することの必要性を説かれている。 適切な図解もあって物質である脳から物ではない心が生じるイメージが掴めそうな気がした。わずか120ページの小冊子であるが、とてもいい本である。 大筋とは関係ないがなんとなく印象に残ったのは、「意識的な忘却のシステムは、脳に用意されていないように思える。」という一文。 以下はメモ的 意識には三つのレベルがある。 1「覚醒している状態」 2「外界に注意をはらっている状態」 3「自分がしていることを自分でわかっている状態」 3の自己意識はヘーゲルさんの「精神現象学」にもやたらわけがわからない書き方で出てきていたので、なぁ〜んだそうだったのかとひとりで勝手に納得したりした。 「精神と物質」におけるシュレディンガーさんの仮説 「意識は生体の学習と連合していて、技能の習得は無意識的である。」はたしか「失楽園の向こう側」で橋本治さんが書かれていた「何かを身に付けるためには、まず意識して繰り返しやって、それを忘れた時に身に付いている。」ということだなと思った。 Mahalo
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