レベル3 の商品レビュー
本当は読んだのは、第三回配本 昭和36年出版のもの。 ミステリーかと思って読んだけれど、どちらかというと「世にも奇妙な物語」風の話だった。誰も死んだりとかはしないので、残酷なのが苦手な私には読みやすかった。 作者は全体的に懐古主義だったように思う。昔はよかったなぁと現実からの...
本当は読んだのは、第三回配本 昭和36年出版のもの。 ミステリーかと思って読んだけれど、どちらかというと「世にも奇妙な物語」風の話だった。誰も死んだりとかはしないので、残酷なのが苦手な私には読みやすかった。 作者は全体的に懐古主義だったように思う。昔はよかったなぁと現実からの逃避願望を持つ人々が、不思議系でも時空がごく限られた区域、時間に入れ替わることに着目した話が収録11話中6話。 アインシュタインが多々引用されていて、時間が蛇行する大河に例えられていて、私たちは両岸が絶壁になったその川をボートに乗って漂っている。つぎの曲がり角も、すでに通り過ぎた曲がり角も確かにあるのに、見ることができない。これにはすごくすんなり来た。 これが書かれた時代のアメリカは不景気まっただ中で、今の日本みたいに幸せ感が低かったんだろうかと思わせる作品集。 表題のレベル3もこの一つ。結構、私の好みに合っていたので、想像の世界をもう少し描写してほしかったな。 後は、チャンスは一度きりというメッセージがこもっている作品も何点かあったかな。 ちょこっと恋愛の話が挟まってくる。 雲のなかにいるものと青春一滴はとってもかわいい話。 雲のなかにいるものは、電話が最初のきっかけで、駅で待ち合わせをするごく平凡な男女の二人。最初は声だけで、お互いにハンサムと美女を想像し合う。そして駅で待っている間に、この人?という想像以上の人物を発見したら別のこれまた素敵な相方と待ち合わせだったとか、すごく不細工な人を見ることを経て、最終的にお互いに気づき、普通の人でよかったと思っていく過程を、頭から漫画のように出る想像の雲のなかに描いていく話。出会った後に、笑顔が素敵とか加算式になっていくと、雲の中の人物が実際より少し素敵と言うおちもかわいらしい。 青春一滴は、バスで隣り合わせになった二人の男女が濃い仲に発展していく話が雑誌に掲載された。みんな、それを見て、うっとりといつか自分にもと頭に描く。そして、そんなチャンスと巡り合ったときに、気が利かないことを言って、チャンスを不意にしてしまった1組の男女。やっぱり現実は物語の様にはうまくいかないと思う二人。偶然再会した時には、うまくいくというちょっ日常的セレンディピティーな話。 二人が再開するのは物語の中より確実が高い、なぜなら2人とも通勤で毎日同じバスに乗るからと書いてあるのがいい。締めもいい。 「これはほんの見本だって?それ、それがあなたたち現実の人生を生きるひとたちの悪いところなのだーーまったく仕方のないひとたちだな!いいかね、二人の仲がむずばれる唯一のてだては、現実の人生を、こうした素晴らしい小説の中の人生にまで持っていくことだったのだ。悪い考えじゃないですよ。あたなもときどき、試してみればいい。成功しないとがかぎらない。あるいはこれが、世界平和をもたらす鍵なのかもしれないよ。
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