肝臓先生 の商品レビュー
堕落論が面白かったので古本屋で見つけて購入してみました。 面白いというよりは読んだ後不思議な読後感をもたらすというか。語り手の心情に同感するわけでもないのですが不思議と嫌悪感はない。面白い作家だなあ、と思ったです。 それにしてもタイトルがきれいですね。 「桜の森の満開の下...
堕落論が面白かったので古本屋で見つけて購入してみました。 面白いというよりは読んだ後不思議な読後感をもたらすというか。語り手の心情に同感するわけでもないのですが不思議と嫌悪感はない。面白い作家だなあ、と思ったです。 それにしてもタイトルがきれいですね。 「桜の森の満開の下」も綺麗なタイトルだなあ、と思いましたが「私は海をだきしめていたい」とか。 露悪的な表現も多いですがロマンティストだったのかな、なんて思いました。
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14冊目。 表題作、他4編。『白痴』(新潮文庫)と収録作が2作被ります。 --- 私はもはや恋をすることができないのだ。あらゆる物が「タカの知れたもの」だということを知ってしまったからだった。 ただ私には仇心があり、タカの知れた何物かと遊ばずにはいられなくなる。そ...
14冊目。 表題作、他4編。『白痴』(新潮文庫)と収録作が2作被ります。 --- 私はもはや恋をすることができないのだ。あらゆる物が「タカの知れたもの」だということを知ってしまったからだった。 ただ私には仇心があり、タカの知れた何物かと遊ばずにはいられなくなる。その遊びは、私にとっては、常に陳腐で、退屈だった。 満足もなく、後悔もなかった。(『私は海を抱きしめていたい』) --- こう書いておきながら、一方で女に --- 然し、恋の病的状態のすぎ去ったあと、肉体だけが残るわけではありますまい。 私は恋を思うとき、上高地でみた大正池と穂高の景色を思い出すのでございます。 自然があのように静かでさわやかであるように、人の心も静かでさわやかで有り得ない筈はない、人の心に住む恋とても、あのように澄んだもので有り得ないことはなかろうと(中略) けれども、私の願いなのです。夢なのです。(『ジロリの女』) --- こう自分の気持ちを仮託させる安吾が大好きです。 最後に、再読して響いた『私は海を〜』の不感症の女にどはまりしていく男性の一節を。 --- 肉慾の上にも、精神と工作した虚妄の影に絢どられていなければ、私はそれを憎まずにはいられない、私は最も好色であるからこそ、単純に肉欲的では有り得ないのだ。 私は女が肉体の満足を知らないということの中に、私自身のふるさとを見出していた。 満ちることの影だにない虚しさは、私の心をいつも洗ってくれるのだ。 --- こんな好色男になりたいや。
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やっぱ坂口のあんちゃん最高やわ 笑 肝臓先生の感動ストーリー?もさることながら、あんちゃんの女論はオレを強くする。見習うしかないかな。
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赤城風雨先生がある年の恩師の謝恩会での挨拶で「肝臓肥大蔓延説」を説くと次々に賛同する大先生たち。この場面はちょっとした爽やかな感動があります。 古い坂口安吾の作品の中に現代中南米文学の痴れ物ぶりを見て楽しめました。
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「真の退屈」「私は海をだきしめていたい」「行雲流水」良かった〜。この力の抜けた感じがたまらん。特に不感症の恋人の話「私は海〜」が最高だ。「ジロリの女」とかの女性関係のリアルな話は苦手。一番長かったけど。
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坂口安吾の代表作「堕落論」につながるネタと思われる戦時中の体験や思想などがわかりやすい文体で書かれていて興味深い。(「魔の退屈」)「堕落論」読後に再読するとさらに安吾の思想が解る気がする。 小編「私は海をだきしめていたい」)の冒頭が良い「私はいつも神様の国へ行こうとしながら地獄の...
坂口安吾の代表作「堕落論」につながるネタと思われる戦時中の体験や思想などがわかりやすい文体で書かれていて興味深い。(「魔の退屈」)「堕落論」読後に再読するとさらに安吾の思想が解る気がする。 小編「私は海をだきしめていたい」)の冒頭が良い「私はいつも神様の国へ行こうとしながら地獄の門を潜ってしまう人間だ。ともかく私は始めから地獄の門をめざして出掛ける時でも、神様の国へ行こうということを忘れたことのない甘ったるい人間だった(後略)」 坂口安吾はずるくて弱い。しかし、そのずるさと弱さを隠さない正直さが、戦後の思想的に圧迫された若者達に圧倒的な支持を得たのだろう。 そして私も、「ずるくて弱い」と知りながら安吾の生き方に憧れてしまう一人です。
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幾つか短編が入ってる中「私は海を抱きしめていたい」が特に好き。満足ができない人間の侘びしさと、女性の美しさの表現が素敵すぎて参りました。「魂の姿態」が美しいという惚け方は、なんかイイですよね。「ジロリの女」のラストも愚かで綺麗で好き。
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