1,800円以上の注文で送料無料

鹿野政直思想史論集(第5巻) の商品レビュー

5

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2011/04/28

「鋳なおされる心身」と副題されたこの本のテーマは、国民の心身---健康や体---です。歴史家が健康や体について論じるというのは、一見奇異に思えましたが、読んでみて、この著者ならではの視点だと思いました。 著者は、厚生省(現在の厚生労働省)がつくられた経緯を明らかにします。厚生省...

「鋳なおされる心身」と副題されたこの本のテーマは、国民の心身---健康や体---です。歴史家が健康や体について論じるというのは、一見奇異に思えましたが、読んでみて、この著者ならではの視点だと思いました。 著者は、厚生省(現在の厚生労働省)がつくられた経緯を明らかにします。厚生省の目的は「国民の健康・福祉を願って」いたわけではありません。名目はそうであってもその先に真の目的がありました。それは強い軍隊を作ることです。そのためには強い兵士が不可欠であり、強い兵士をつくるために健康な国民が必要なのです。 そのため軍隊内では伝染病の予防に非常に神経を尖らせたことが窺われます。海軍での健康診断のおり、心臓の悪い労働者を診察した軍医長がこともなげにこう言います。『心臓はかまわん、伝染せんからネ』。度重なる薬害問題が取り沙汰されますが、このような体質の厚生省であれば、それも至極当然のように思われます。 「鋳なおされる」という言葉から「鍛えなおされる」ことを連想しますが、このことは同時に、金属をもう一度溶かして別の型に入れることを意味します。つまり「型にはめる」ことです。教育基本法を改定し、国旗・国歌を強制するのもその一環なのですね。このような道を、この国はまた歩んでいるようです。 最後に、「君が代」を「民が世」と歌うためにほんの一音を変える(KI を TA)運動があることを知りました。これがせめてもの救いなのでしょうか。

Posted byブクログ