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ヒンドゥー神話の神々 の商品レビュー

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2015/12/20
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ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァなど、ヒンドゥー教にて崇拝される神々についてを解説した書。多数の図版や写真と共に神々の特徴やエピソードを詳説するほか、地方の土着信仰についても紹介、それらを通して「ヒンドゥイズム」という枠組み自体の是非と再考の必要性を説く。 本書は、ヒンドゥー教神話にて登場する神々を紹介する本である。取り上げられているのはインドラなどのヴェーダ時代の神々から、ブラフマー・ヴィシュヌ・シヴァの三大神にその家族神、大女神などであり、神話における彼らの姿やその信仰などが詳しく解説されている。特にページが割かれているのは三大神と大女神についてであり、様々な神格・属性を重層的に有する彼等の様相を多数の宗教画・彫刻と共に紹介している。その為、この本一冊あればヒンドゥー教の神々については一通り学ぶことが出来る。 しかし本書の最大の特徴と言えるのは、こうした(日本でも一般的に知られている)ヒンドゥー教の神々についての解説よりも、地方の土着崇拝についての紹介、そして「ヒンドゥイズム」の複雑で多様な様相についての論にあると言える。本書はインド西南の都市プネーにて崇められている土着の神々(「恐ろしいラクシュミー女神」マリアイ、ダッタ神など)についても紹介しているのだが、そうした神々は必ずしも汎インド的な宗教形態(「大いなる伝統」)に合致している訳ではなく、寧ろそれに対立すらしているものも多い。そこにあるのは(経典及び教義を有する正統派ヒンドゥイズム〔A〕という意味での)「ヒンドゥイズム」の一語では掬いきれない多種多様な宗教形態であり、著者はこうした「経典や教義を持たない土着的宗教形態〔B〕」を考慮した「ヒンドゥイズム」概念の再考を説いている。(我々がよく知る)汎インド的で主流派のヒンドゥイズムと相反する、それどころか対立・抗争を引き起こしている土着崇拝の形態がインドに存在するということは、「多様な信仰を内包・容認するインドの宗教風土」というような説明をたびたび目にしてきた私にとって衝撃的であった。そして(所謂)カースト間での信仰形態の隔絶、浄・不浄(聖性・非聖性)観の違いなど、多様かつ重層的なものと見られがちなインドの宗教形態の中にある抗争や対立に注目した上での「ヒンドゥイズム」概念の問い直しは頷く所が多かった。その意味でも、本書は「多種多様な」神々の姿を紹介するものだと言えるだろう。

Posted byブクログ