谷崎潤一郎全集 愛読愛蔵版(21) の商品レビュー
「私の貧乏物語」 自分がいつもお金に困っていて,常にお金のために書かなくてはいけないとぶつぶついっている. 「東京をおもふ」 関東大震災を機に関西に移住した著者が震災後10年たって書いた東京の悪口.ほとんど言いがかりのような文章だが,背後には自分が生まれ育った江戸の面影を残した...
「私の貧乏物語」 自分がいつもお金に困っていて,常にお金のために書かなくてはいけないとぶつぶついっている. 「東京をおもふ」 関東大震災を機に関西に移住した著者が震災後10年たって書いた東京の悪口.ほとんど言いがかりのような文章だが,背後には自分が生まれ育った江戸の面影を残した下町が震災復興の名の下に大きく失われていったことがある.でもここまで書かなくてもという感じは残る. 「文章讀本」 古典から英語までを引用して谷崎流の文章の書き方を解説している.最後の「品格について」を読むと今の日本語が完全に失ってしまったものを見ることができる.自分で書くのに参考になるところは多くないが,谷崎潤一郎の創作における文章作法をのぞくという意味ではおもしろい.漢字と送り仮名のところではプロの作家のこだわりを感じた.そして谷崎の融通無碍な文章のすごさはこういうこだわりを超えたところにある.句読点の議論で,例として自作の「春琴抄」を添削して句読点を打ち直しているのがおもしろかった. 2015年6月 「源氏物語の現代語譯について」 源氏物語の現代語訳を始めた経緯,経過,訳の方針など.
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