世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい の商品レビュー
誰もが近寄りたくない人々や集団にスポットをあて、ノンフィクションの映画作品を作り上げる森監督。 多様性を持った人々が世界には数多くいるが、自分の身近にそういった人が近づいてくると本能的に避けようとするのは否めない。 きっと自分もそうするだろう。自分の理解が及ばないものを遠ざけ...
誰もが近寄りたくない人々や集団にスポットをあて、ノンフィクションの映画作品を作り上げる森監督。 多様性を持った人々が世界には数多くいるが、自分の身近にそういった人が近づいてくると本能的に避けようとするのは否めない。 きっと自分もそうするだろう。自分の理解が及ばないものを遠ざけようとするのは自然なあり方である。 それでも他人の気持ちを理解する努力は怠らないようにしていきたい。他人の痛みや心が100%分かるようになれるとは絶対言わないが、苦しんでる人や助けを求めている人に誰も手をさしのべない世の中は悪夢でしかないからだ。
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オウム真理教の信者たちを被写体にしたドキュメンタリー「A」「A2」をつくった森達也さんの著書「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」。 この本の中で、森さんが繰り返し書いているのは、オウム真理教の信者たちのほとんどが善良で、穏やかで、純粋な人たちであるということだ。 しかし、そういう善良で穏やかな人たちが、「組織」を作った時に、何かが停止して、暴走することがある。 そして、穏やかで善良な人たちが、限りなく残虐になれる。 「組織」といえば、「学校」や「企業」が思い浮かぶ。 小さな単位では「家族」もそうかもしれない。 森氏は、組織に属する限り、善良で穏やかな人が残虐になる可能性(リスク)を、どこかに抱えているという。 重大な事件や犯罪が起きると、犯人の成育歴や動機を探ったりする。 自分とは「別の」人間であることを確認して、安心するのだと思います。 自分には関係ない。 悪いのはアイツ。アイツのせい。 そんなふうに考えて、 それ以上の思考を停止をしてしまうのは、とても危険だと感じています。
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オウム真理教を被写体にした「A」という映画についての内容が多い。 しかし、当該の映画を観ていなくても十分に通じる内容である。 過去に文芸誌等色々なところで発表されているものを集めているため、内容的に重複することがあった。 しかし、それらは著者が本当に伝えたいことであり、何度でも言...
オウム真理教を被写体にした「A」という映画についての内容が多い。 しかし、当該の映画を観ていなくても十分に通じる内容である。 過去に文芸誌等色々なところで発表されているものを集めているため、内容的に重複することがあった。 しかし、それらは著者が本当に伝えたいことであり、何度でも言いたいことなのだと思う。 例えば、オウム真理教の信者や戦争に加担した兵士たちは、一見凶暴であると思いがちだが、彼らは、私たちと同じ優しい善良な一般市民である。 そして、彼らが人を殺めるのは悪意ではなく、むしろ善意だということ。この一文を読んだ時には鳥肌が立った。 悪意ではなく、善意が人々を傷つけると思うと、やるせない。 けれど、オオム真理教に関していえば、彼らは普通の人々であり、単純に糾弾するだけでは、なにも解決にならない。表面的ではなく、もっと根の部分を見なければいけない。 ドキュメンタリーを撮るということのジレンマは、とても興味深く、著者の立場だからこそ感じる葛藤は、読者の私にはとても引き受けられそうもないほどで、覚悟を持って映画を撮り続けている著者の凄さを感じた。 著者が言うように、たまには一人になって考えることも大切だし、一人称で考えることも大切だと思う。 世界はもっと豊かだし、人はもっと優しいと皆が認識することで世界はもっと良くなるのだろう。
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森達也の本気が見られる本。 長々と綴られたエッセイで、内容は多岐に渡るので好き嫌いがあるかもしれない。 やっぱりこのひとの理不尽を許さない態度、一貫した姿勢、やさしい感覚が好きですね。 タイトルも、あったかくていい。ひさしぶりの森達也本でした。
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人はひとりとしてみたらオウムでサリンまいた人でも本当は優しいし、正義感があるし、子供もいるだろうし、親もいるはずだ。だけれども社会の世論は彼らの全てを拒絶する。今ではそしてその世論は僕らそのもの。人は一人ならそこそこ。でも共同体となって群れると、思考停止になってありえない方へと進...
人はひとりとしてみたらオウムでサリンまいた人でも本当は優しいし、正義感があるし、子供もいるだろうし、親もいるはずだ。だけれども社会の世論は彼らの全てを拒絶する。今ではそしてその世論は僕らそのもの。人は一人ならそこそこ。でも共同体となって群れると、思考停止になってありえない方へと進んでいく。311の震災、原発だってそうだ。そしてどんどん右傾化していく。それが今の日本。そしてそれは僕らが構成している日本だ。想像してほしい。世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい。
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相手を思い、考えて行動するだけで今よりは良い世界になると思う。相手の行動によって「ムカつく、悲しい、仕返ししてやる」という気持ちを持ってしまった時、「どうして相手はあんなことをしたのだろう。何かあったのか」と一歩踏みとどまって考えてみてほしい。
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「A2」撮影後の後日談や、これまでに森達也が関わってきた取材対象についてまとめた1冊。 オウムの指名手配犯が次々と捕まり始めたいま読み始めてみたが、彼の意見はいま現在に至るまで、ぶれているようでぶれていない。 他者への想像力を働かせること。 それをやめるのは楽に生きることへの近...
「A2」撮影後の後日談や、これまでに森達也が関わってきた取材対象についてまとめた1冊。 オウムの指名手配犯が次々と捕まり始めたいま読み始めてみたが、彼の意見はいま現在に至るまで、ぶれているようでぶれていない。 他者への想像力を働かせること。 それをやめるのは楽に生きることへの近道ではあるが、世の中全体がそうなってしまうことは恐ろしい。 いろんな見方があっていいと思うが、目の前の物事に対して疑問を抱き続けることは、いまの日本においてとても重要なのだと思う。
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一冊にまとまっている文章を読むと、森達也が繰り返し同じことを言っているのがよく分かる。想像力をもっと、思考停止になるな。こういうメッセージは好き。
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AとA2という、森達也監督作品を二作続けて鑑賞した感想は、まさにこの著書のタイトル通りである。 別に、森さんの話に何から何まで、賛同し、影響されているとは思わない。 しかし、非常に共感できる言葉が沢山あるということは、間違いない事実である。 社会の人々が、こう言うから、納得。 誰...
AとA2という、森達也監督作品を二作続けて鑑賞した感想は、まさにこの著書のタイトル通りである。 別に、森さんの話に何から何まで、賛同し、影響されているとは思わない。 しかし、非常に共感できる言葉が沢山あるということは、間違いない事実である。 社会の人々が、こう言うから、納得。 誰も賛同しないから、反対。 私はそんな雰囲気は好きではないし、人が西に行くなら、東に行きたい人間だ。 けれども、それはなかなかできることではなく、自然に大衆に迎合しているのが、普通の日本人かもしれない。 しかし、森さんがまとめているとおり、ちょっとした?を表現する訓練をして、 感情の赴くままにたまには行動して見た方が人間は楽しいのが、本来の社会的な動物の在り方ではないか。 確かに、森達也さんが指摘した視点に憧れる三十歳の人間がここにいる。
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「麻痺しきってしまったほうが、楽だけど でもせめて矛盾に対しての葛藤と自覚くらいは 持ち続けたほうがいい」 私が、「A」を周囲の人に勧めることが できなかった理由は、オウムにシンパシーを 持っているかのように誤解されることを 恐れたから。小心者です。 でもAやA2は「被写体は...
「麻痺しきってしまったほうが、楽だけど でもせめて矛盾に対しての葛藤と自覚くらいは 持ち続けたほうがいい」 私が、「A」を周囲の人に勧めることが できなかった理由は、オウムにシンパシーを 持っているかのように誤解されることを 恐れたから。小心者です。 でもAやA2は「被写体はオウムだけど、 テーマは今の日本社会そのもの」なので、 小中高の授業で見てもいいはずなのに。 「本当に警戒すべきは、外なる悪では なくて内なる善」であるという言葉から 見えるものがいっぱい。
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