誰でも成功する中学生の叱り方のキーポイント の商品レビュー
横浜市の公立中学校教員を30年以上やっていた著者が、中学生の問題行動、つまり校則違反から万引き、遅刻、暴力、喫煙、いじめなどの問題に対して、どのような声かけを行って指導するか、どのように対策をとるか、というあれやこれやの方法が紹介された本。 豊富な経験と、著者の頭の良さから導...
横浜市の公立中学校教員を30年以上やっていた著者が、中学生の問題行動、つまり校則違反から万引き、遅刻、暴力、喫煙、いじめなどの問題に対して、どのような声かけを行って指導するか、どのように対策をとるか、というあれやこれやの方法が紹介された本。 豊富な経験と、著者の頭の良さから導き出される解決策の提案が、実践的で参考になる。例えば「叱る」にも色んなパターンがあって、強面で大声を出すだけではない、という部分が分かりやすい。「叱るためにほめる」、「教師が範を示すことで無言で叱る」、「生徒をゲーム感覚でのせて、叱る目的を達成してしまう」、「生徒集団の力を組織して、叱る目的を達成してしまう」(p.23)という手法を持っておくことが大事だと分かる。特に3つ目の「理屈を言っても実行が難しいことは、遊び感覚に置き換えるに限る」(p.51)という部分、この手法は先生がだいぶん頭が良くて、かつ生徒との信頼関係のある場合でないと、なかなか難しい。そう考えると、一般的なモラルに訴えて、長々と説教を垂れるといった方法だけでは、あまり効果はないし、場合によっては逆効果にすらなる、ということも分かった。これに関連して、問題行動の裏にある「メッセージを読み取る努力をする」というのが、最も大事なことだと思う。メッセージが読み取れなければ、「教師を何年やっていても、叱り方のバリエーションは広がらず、通り一遍の叱り方しかできなくなる。通り一遍の叱り方は、耳から耳へと筒抜けするだけだ。」(p.137)ということだから、おれも中堅の教員になってきて、生徒のメッセージを適当に流してしまうことのないように気をつけたい。 これとは話は変わるが、よく「自主性を尊重」とか言うのだけど、「『教育は信じることだ』という言葉があるが、それは必要な指導を厳しく積み重ねて、最後に信じることだ。必要なことを何もやっていないうちに信じるならば、ただの指導の放棄と変わらなくなる。」(p.53)という部分は本当にその通りだと思う。 他にも納得した部分はいろいろあったので、最近こういう本を全く読んでいなかったので、初心に帰る意味でこういう本を読むのはいいかもしれない。ただこの本は今から10年以上前の本なので、ベースとなる考え方は学べるが、やっぱり最近の生徒指導の中心的なトピックであるスマホ、ゲーム、SNSに関する指導の部分は書かれていない(少しだけ携帯に関する指導の部分はある)。この著者だったらそういう問題にどう対処するのか、興味を持った。その代わりに「喫煙」とか「校内徘徊」とかは、おれの学校ではほとんど問題にならない部分だった。でも特にゲームに関しては中毒性のある「喫煙」と似たところもあるんじゃないかな、と思う。「『吸わない、吸えない環境づくり』が、できるかどうかですべてが決まる」(p.142)という部分をヒントにして「スマホやゲームをやらない、やれない環境づくり」というのができるかもしれない、ということをちらっと思った。でも喫煙とも違って、社会全体、みんながやっていることだから、これもそんなに簡単にはいかないだろうけど…。(21/03/03)
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