ダルジールの死 の商品レビュー
久しぶりにダルジール警視シリーズを読む。 通報してきたのが無能で鳴らすヘクター巡査でなかったら、通報を受けたのが無頼で鳴らすダルジール警視でなかったら、爆破事件の様相はまったく違っていたかもしれない。だが現実には、爆発に巻きこまれたダルジールは瀕死の重傷で生死の境をさまよい、パ...
久しぶりにダルジール警視シリーズを読む。 通報してきたのが無能で鳴らすヘクター巡査でなかったら、通報を受けたのが無頼で鳴らすダルジール警視でなかったら、爆破事件の様相はまったく違っていたかもしれない。だが現実には、爆発に巻きこまれたダルジールは瀕死の重傷で生死の境をさまよい、パスコーがただ一人爆破事件を追っている。事件の背後には、反テロを標榜してテロ容疑者や支援者を殺してゆく“新テンプル騎士団”と名乗る謎のグループが介在しているらしい。だが、敵のメンバーは公安捜査の中枢にも…ダルジールの容態を気づかいつつも、パスコーは単独捜査に突っ走る。 スパイ小説や冒険小説の味わいも含まれている。そういえば、パトリック・ルエル名義の作品をかつて読んだことがあった。
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「ダルジールの死」とはドキッとさせる題名だ。意図的にドキッとさせるために、邦訳の際にそういう題名をつけたのかな、とも思ったが、元々の題名も"The Death of Dalziel"となっているので、そういう訳ではない。この本を買ったときには、シリーズの次作が...
「ダルジールの死」とはドキッとさせる題名だ。意図的にドキッとさせるために、邦訳の際にそういう題名をつけたのかな、とも思ったが、元々の題名も"The Death of Dalziel"となっているので、そういう訳ではない。この本を買ったときには、シリーズの次作が既に発刊になっていたことを僕自身は知っていたので、結局はダルジールは死なないとは分かっていたのだけれども。 爆破事件に巻き込まれたダルジールは、この物語の間中、生死の境をさまようこととなる。今回の物語は、部下のパスコー(それとその妻のエリー)が主人公となる。 それはさておき。物語の最後でパスコー宛に自宅に送られてきたEメールを、妻のエリーが削除してしまう場面がある。ネタばれになるので、詳細は書けないのだけれども、そのメールは、ある事件の重要な情報を含んでいるものだ。そのことをエリーは知っている。一方で、その事件を追うことになると、パスコーが危ない目に会いかねないこととなる。そのこともエリーは知っている。夫を危ない目にあわせたくない、というよりも、夫が危ない目にあっていることを心配したくない、万が一の時に家庭が壊れてしまうようなリスクの芽を摘んでおきたい、というのが削除した彼女の気持ちだと思う。思い切りが良い。削除した場面で物語は終わっているので、その後のことは想像するしかないのだけれども、Eメールの差出人とパスコーとは知り合いなので、Eメールが削除されたことを、いずれパスコーは知ることになるだろう。その時には夫との間でひと悶着もふた悶着もあることをエリーはよく分かっているはずだ。それでも削除してしまう。「思い切りが良い」というのはそういう意味だ。 物語自体も面白かったけれども、最後のエピソードもしゃれている。
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他の人にはまねできないあのハチャメチャなダルジールが生死をさまようので、タイトルから最後までハラハラさせられる。その分パスコーがダルッジール的発言の大連発で面白い。また、3ページに1回くらい苦笑させるところがあって楽しめる。
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2008年3月発行。2007年の作品だから快調な翻訳ですね。ちょっとどきっとするタイトルですが。 8月末の休日、家でくつろいでいたパスコー警部は、緊急の呼び出しを受けます。警戒中のビデオショップに拳銃を持った男がいたという通報、しかし見たのがヘクタ−巡査だったために皆が甘く考えて...
2008年3月発行。2007年の作品だから快調な翻訳ですね。ちょっとどきっとするタイトルですが。 8月末の休日、家でくつろいでいたパスコー警部は、緊急の呼び出しを受けます。警戒中のビデオショップに拳銃を持った男がいたという通報、しかし見たのがヘクタ−巡査だったために皆が甘く考えていたところ目の前で爆破、ダルジールが重傷を負います。 自分もけがをしたパスコーですが、テロ対策組織に加わり、ダルジールの代わりのように奮戦。 一方、パスコーの妻エリイは新進作家としてテレビのインタビューに答え、番組中に事件に巻き込まれます。 ダルジールの臨死体験など織り込むのはさすがヒル。 まったく〜達者です。
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中部ヨークシャー警察の物語、待望の最新刊!事件・人物・人間関係などさまざまな事柄が次回以降の作に投影されるため、巻を重ねるたびに背景の厚みが増していくこのシリーズ。すでに大叙事詩と言っていい。この叙事詩に神のごとく君臨するダルジールの死。あまりに不穏なタイトルに激しく動揺した。モ...
中部ヨークシャー警察の物語、待望の最新刊!事件・人物・人間関係などさまざまな事柄が次回以降の作に投影されるため、巻を重ねるたびに背景の厚みが増していくこのシリーズ。すでに大叙事詩と言っていい。この叙事詩に神のごとく君臨するダルジールの死。あまりに不穏なタイトルに激しく動揺した。モース警部(作者違うけど)の死からだって、まだ立ち直っていないのに…。パスコーたちとともに彼の生還を祈りつつ読んだ。 あいかわらず密度が高く、一気に読ませる。環を完全に閉じずに余韻を持たせ、次回以降に含みを残すところもいつもどおり。時事的な問題も織り込み、イラク侵攻以後のイギリスの現状がほの見える。が、なんといってもシリーズが終了しなくてよかった!涙が出そうだ…。
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