法的平和の恢復 の商品レビュー
著者のいう威嚇刑法から修復指向の犯罪法への変換による法的平和の恢復という論には説得力がある。しかし、著者本人も認めるように、それはあまた普遍的に刑事法全般、つまりすべての犯罪傾向に対し有効ではありえない。そこはこの修復的手法の一大欠点となりうるところのように感じるが、そこまでの言...
著者のいう威嚇刑法から修復指向の犯罪法への変換による法的平和の恢復という論には説得力がある。しかし、著者本人も認めるように、それはあまた普遍的に刑事法全般、つまりすべての犯罪傾向に対し有効ではありえない。そこはこの修復的手法の一大欠点となりうるところのように感じるが、そこまでの言及はない。比較的軽微な暴力事案や経済事案であれば、犯罪者と被害者の融和は実現可能であるかもしれず、それにより、両者が健全な社会構成員としての側面を回復しえるなら、本人たちにとっても共同体にとってはそれこそが望ましい。しかし、凶悪犯罪における加害者と被害者が、真の意味で和解し回復しあえるというのは幻想であろうと感じる。そこは修復的手法をとりえない限界を示していると思うのだが、そのあたりの詳述はない。さらに国家がなぜ応報的権能を個人から奪ったのかという観点からの議論はあまり見られない。そのあたりをもう少し考察してあればよかったのだが…
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