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悪人が歴史をつくる の商品レビュー

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2024/05/20

ルネサンス期~近代初期を中心とした、西洋の22人を取り上げた叢伝。あとがきによると、人物の選択基準は特にないらしい。 この本が他の伝記と異なる点は「人間復権」「物語的歴史」として書こうとしていること。著者の主張を要約すると、歴史的事実は大事だが、単に事項を列挙するだけの「歴史学...

ルネサンス期~近代初期を中心とした、西洋の22人を取り上げた叢伝。あとがきによると、人物の選択基準は特にないらしい。 この本が他の伝記と異なる点は「人間復権」「物語的歴史」として書こうとしていること。著者の主張を要約すると、歴史的事実は大事だが、単に事項を列挙するだけの「歴史学者」が市民に求められているのではなく、事項間をつなぐ創造性・直感(≒解釈?)を持った「歴史家」による、人間を中心とする歴史が必要、という感じだろうか。 たしかに前半や二人の人物を対比させる文章(特に「デューラーとグリューネヴァルト」「マキャヴェリとモーア」が個人的には秀逸)は物語的歴史らしく面白かった。ただ、中盤の文章がやや面白味に欠けるのは、批判する「事項の羅列」にやや陥ったからか(詰め込み過ぎ?)。 また、タイトルの「悪人」とは人間の多面性や、当時の状況による歴史悪のことを示すそうだが、この意味でいうとF・ベーコンやメッテルニヒはまさにそれ。一方で、ザビエルはどの辺が悪人だったかよく分からなかったけど…。 でも、このような描き方の視点が秀逸で、古い本だがとても面白かった。 あえて難を言えば、執筆が古いだけに、形容詞の表現が現在ではほとんど使わないだろうものが多いこと。

Posted byブクログ