国際紛争と国際法 の商品レビュー
国連憲章によって戦争・武力行使が一般的に禁止されたのだから、戦争の存在を前提とする戦争法はもはや存在意義を喪失した、といえるのか。第2次世界大戦後の平和に対する強い熱望と国連に対する過大な幻想から、戦争法の存在意義を否定する見解(戦争法不要論)も見られた。1949年に国連の国際法...
国連憲章によって戦争・武力行使が一般的に禁止されたのだから、戦争の存在を前提とする戦争法はもはや存在意義を喪失した、といえるのか。第2次世界大戦後の平和に対する強い熱望と国連に対する過大な幻想から、戦争法の存在意義を否定する見解(戦争法不要論)も見られた。1949年に国連の国際法委員会が法典化の計画項目から戦争法の除外を決定したのも、そのような考えからであった。しかし、一方で、国連憲章は武力行使(国際紛争の強制的解決手段)を一般的に禁止したけれども、他方で国際司法裁判所の裁判管轄権は強制的でなく、さらに判決の執行制度を十分整備していないことからも明らかなように、国際社会は、国家が強制的解決手段を全面放棄するほどの国際紛争解決のための司法的解決制度を完備していない。紛争当事国の一方が自衛権を根拠に戦闘行為を開始した場合でも、国連憲章体制においても、安全保障理事会が常任理事国の拒否権により当該戦闘行為の合法性を判断しないか、判断が不可能なことも当然想定される。集団安全保障体制が機能せず、国連安保理による合法性の判断が存在しない場合には、従来の法状態と変わりなく、国連法体系上、戦争法の存在予知は依然残されているといえる。
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