1,800円以上の注文で送料無料

高城高全集(1) の商品レビュー

4.3

6件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2014/01/24

和製ハードボイルド小説のパイオニアなんだそうで、知りませんでしたが、それもそのはず、1970年代に休筆してから2008年の最新作まで30年の休筆期間があったのだそう。 舞台の北海道道東の描写が、とても味があります。推理小説の筋立てとしても面白い。主人公がテキパキと物事を解決し...

和製ハードボイルド小説のパイオニアなんだそうで、知りませんでしたが、それもそのはず、1970年代に休筆してから2008年の最新作まで30年の休筆期間があったのだそう。 舞台の北海道道東の描写が、とても味があります。推理小説の筋立てとしても面白い。主人公がテキパキと物事を解決しすぎな感はありますが、そこはハードボイルドだし。 創元推理文庫から個人全集が4巻出ているよう。 集めてみよう。

Posted byブクログ

2013/05/23

高城高の数少ない長編小説。 作者の年齢が高いため、小説の設定も登場人物も古い。 当然のことながらインフラ面での状況が現代とはまったく隔絶しているが、それでいて情況描写には懐かしさを覚えるものがある。 新聞記者として恵まれない環境の中で過去の事件を改めて辿っていき、真相を探り出して...

高城高の数少ない長編小説。 作者の年齢が高いため、小説の設定も登場人物も古い。 当然のことながらインフラ面での状況が現代とはまったく隔絶しているが、それでいて情況描写には懐かしさを覚えるものがある。 新聞記者として恵まれない環境の中で過去の事件を改めて辿っていき、真相を探り出して行くというストーリー。 理不尽な配置替え等サラリーマンの悲哀など現代と通じる部分があるところが面白い。

Posted byブクログ

2012/12/23

S30年代に学生作家としてデビューしたものの、新聞記者の仕事が忙しくなり筆を絶った作家・高城高。その昭和の香りがにじみ出る作品が復刊されました。 「元祖ハードボイルド」と云わんばかりのかっこ良さが文体からあふれています。

Posted byブクログ

2012/05/07

昭和三十三年、夏。北海道。 未明の落石沖で、殿村水産所属の運搬船・天陵丸が沈没した。 積荷過重による事故とみられ、特に不審な点はないと思われた。 その同じ朝、花咲港に入港した一隻のサンマ船が岸壁に衝突した。 こちらも単純な過失による事故と思われたのだが、 天陵丸沈没事故...

昭和三十三年、夏。北海道。 未明の落石沖で、殿村水産所属の運搬船・天陵丸が沈没した。 積荷過重による事故とみられ、特に不審な点はないと思われた。 その同じ朝、花咲港に入港した一隻のサンマ船が岸壁に衝突した。 こちらも単純な過失による事故と思われたのだが、 天陵丸沈没事故と、サンマ船の衝突事故とを結びつける 不穏な噂が天陵丸の乗組員の遺族から流れ始めた。 そのネタに飛びついた不二新報釧路支局長の江上武也は 独自の取材を進め、ついに特種の記事をあげることに成功する。 だが、何者かの策謀によって、江上は釧路を逐われることに。 そして三年後。 かつての事件の関係者が次々と不審死を遂げたことを知り、 江上は再び事件のことを調べるために、釧路へと帰ってきた。 日本のハードボイルドの礎を築いた伝説の作家・高城高の 唯一にして幻の長編を収録した、高城高全集第一巻。 2008年版の「このミス」にランクインされた「X橋付近」で 初めて高城高という作家のことを知ったのだが、 ランクインを受けてか、創元から全集が刊行されるとのことで これ幸いとさっそく手にとってみた次第。 「硬質」などの言葉で表現されることが多いその文体の特徴だが 確かに、読んでいてそれに近い感想は持った。 必要最低限の描写のみを残したスリムな文体で、 あれこれ言葉を尽くして説明するということをしていない。 それでいて、その必要最低限の言葉によって、 情景や心理がしっかりと描き出されている。 鋭くて、速い。 そして、確か。 もう少し俗に言うならば、とてもカッコよくて、渋い。 そんな文章だ。 プロットも、意外と凝っていてうならされた。 やや複雑な人間関係を、この文体で説明していくものだから ついていくのに少しだけ努力を要したが、 その点に対して「わかりにくい」などと文句を言って この作品を低く見るような愚は犯したくないものである。 とにかく最後まで雰囲気が素晴らしい。 霧に覆われた北海道の景色を実際に見たことはないが、 優れた心象風景を提供してくれる絶好の舞台設定だと思う。 200ページ強と、長編としては短めの作品だが、 そのボリュームもこの作品には最適。 全集の次巻は5月発売らしい。 刊行が待ち遠しい本が、また一冊増えてしまった。

Posted byブクログ

2009/10/04

 霧の街・釧路がハードボイルドの舞台として格好であった時代。太平洋炭鉱が海底から石炭を掘削し、サンマ漁で港湾は賑わい、街のいくつもの映画館で裕次郎がかかり、繁華街は現在の歌舞伎町のように賑わっていたという。  夜の闇の中で船員同士の喧嘩がマキリによる殺傷事件に変わっても、日常茶...

 霧の街・釧路がハードボイルドの舞台として格好であった時代。太平洋炭鉱が海底から石炭を掘削し、サンマ漁で港湾は賑わい、街のいくつもの映画館で裕次郎がかかり、繁華街は現在の歌舞伎町のように賑わっていたという。  夜の闇の中で船員同士の喧嘩がマキリによる殺傷事件に変わっても、日常茶飯のこととして警察もろくすっぽ調べもしなかったという。流れ者やヤクザ者が巷に溢れ返っていた昭和33年という時代。  著者は北海道新聞釧路支局に勤務しており、本書の主人公は網走支局に追われた支局長・江口が、釧路での連続殺人事件を探りに、3年前の事件を掘り起こそうと旅に出るところから始まる。  根室や花崎といったさいはての漁港の描写、釧路の太平洋側にある春採湖で出会う少女との束の間のロマンティックな一幕など、映像化されてもいいような生粋のハードボイルドである。  大藪春彦よりも先に日本にハードボイルドを持ち込んだ作家だという意味がよくわかる、著者唯一の長編作品。素晴らしい。  時を超えて甦った本書の企画を立ち上げた人に、とにかく喝采を送りたい。そしてまた現在時点でなお文庫版あとがきを書いてくれた作家その人に対しても。

Posted byブクログ

2009/10/04

ハードボイルドの持つあくの強さや独特の世界観は感じられなかった。筆致は淡々としていて至極シンプル。事実のみを追いかける温度差の少ない展開は社会派のよう。本作品が作者の唯一の長編らしいが、そう思って読むと、どこか荒削りな出来も仕方ないのかなと諦めもつく。ひとつひとつのエピソードは丁...

ハードボイルドの持つあくの強さや独特の世界観は感じられなかった。筆致は淡々としていて至極シンプル。事実のみを追いかける温度差の少ない展開は社会派のよう。本作品が作者の唯一の長編らしいが、そう思って読むと、どこか荒削りな出来も仕方ないのかなと諦めもつく。ひとつひとつのエピソードは丁寧にきっちり書いてあるのだが、その繋ぎが決してスムーズとは言えない。沈没事件から三年後に事件は動き出すが、この三年間の空白の必然性もあやふやである。主人公が足を使って関係者の証言を追う姿勢は好きなのだが、これだけの規模になった事件を、駆け足で終わらせるようなラストにはさすがに首を捻ってしまった。もう少し余韻に浸ってもよかったのではないか? 一作だけでこの作家を評価するのは勿体無いので、いずれは短編にも目を通してみたい。

Posted byブクログ