寺山修司未発表歌集 月蝕書簡 の商品レビュー
寺山修司さんの歌集ですね。 未発表の短歌が収められています。 どうも、ご自分でも未完成、或いは自身の諧謔的一面が出過ぎているために、発表を見送ったものと思われます。 いまだ記述されざる歴史もつゆえに 髭のかなしき真夜中の猫 幻燈のひなたぼこりに一匹の猫が けむ...
寺山修司さんの歌集ですね。 未発表の短歌が収められています。 どうも、ご自分でも未完成、或いは自身の諧謔的一面が出過ぎているために、発表を見送ったものと思われます。 いまだ記述されざる歴史もつゆえに 髭のかなしき真夜中の猫 幻燈のひなたぼこりに一匹の猫が けむりとなるを見ており まなざしが一羽の蝶となりてゆく 迷路あそびのゆきどまり春 親指の親にはじかれそら豆が とび出す青き関東平野 目かくしをとればみやこと思われて いつまでかがむ野のかくれんぼ わが内に一人の父が帰りくる 夜のテレビの無人飛行機 父といて父はるかなり春の夜の テレビに映る無人飛行機 王国の猫が抜け出すたそがれや 書かざれしかば生まれざるもの 地の果てに燃ゆる竈をたずねつつ 父ともなれぬやが冬の旅 家族を詠んだ短歌が多いのですが、ご自分で「私はオレステ・コンプレックスの虜になってしまっている。」と述べられているからか、自虐的な短歌や、父母との距離を感じさせられるものが多々あります。 どちらかと言うと、私的には好ましくない歌集でした。
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全歌集後かしゅうをだしてなかったとのことで佐佐木幸綱との対談を合わせてまとめてあるやつ。完成稿と未完成が判別云々…て話とか遺稿集の編集ほえはうとしてもおもしろいはなしがあとがき(田中未知)にある。 「我」というものとともに興隆した近代短歌が曲がり角に来ている話とか。 寺山修司...
全歌集後かしゅうをだしてなかったとのことで佐佐木幸綱との対談を合わせてまとめてあるやつ。完成稿と未完成が判別云々…て話とか遺稿集の編集ほえはうとしてもおもしろいはなしがあとがき(田中未知)にある。 「我」というものとともに興隆した近代短歌が曲がり角に来ている話とか。 寺山修司が自分の過去作から脱しようとしてる話とかも面白かった。 911.1
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田中未知編寺山修司未発表歌集です。1973年以降再び短歌を書きだしてからの180首余りが収められています。内容は習作を含め様々だけれど、いずれも懐かしい寺山ボキャブラリーで覆われた物語で、一気に貪るように読んでしまいました。タイトルは、寺山修司が書き下し歌集を出すことを想定して予...
田中未知編寺山修司未発表歌集です。1973年以降再び短歌を書きだしてからの180首余りが収められています。内容は習作を含め様々だけれど、いずれも懐かしい寺山ボキャブラリーで覆われた物語で、一気に貪るように読んでしまいました。タイトルは、寺山修司が書き下し歌集を出すことを想定して予定表に書きつけたものからきています。
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「鉛筆はかなしからずや少年の天文学の夜を塗りあまし」 「一匹の生くる蛍をはさみ閉じ燃え上がるを待つ悪魔の辞典」 「出刃包丁洗う夕闇すきとおりひとりの姉が銭湯にゆく」 (12.7.28~8.11)
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現実と虚構。その狭間を言葉という方法で表現しようとした寺山修司が晩年にもう一度三十一音の世界に挑み、敗した痕跡。三島由紀夫は言葉に限界を感じ、言葉を捨て行動という手段をとった。しかし寺山は決して言葉を手放さなかった。亡き人の「未発表」作品というのは苦手だ。なのに彼の韻律から滲み出...
現実と虚構。その狭間を言葉という方法で表現しようとした寺山修司が晩年にもう一度三十一音の世界に挑み、敗した痕跡。三島由紀夫は言葉に限界を感じ、言葉を捨て行動という手段をとった。しかし寺山は決して言葉を手放さなかった。亡き人の「未発表」作品というのは苦手だ。なのに彼の韻律から滲み出る言葉への執着心はどうしてこうも美しいのだろうか。
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王国の猫が抜け出すたそがれや書かざれしかば生まれざるもの いまだ記述されざる歴史もつゆえに髪のかなしき真夜中の猫 鋏にて切り抜かれたる一匹の書籍市場の猫や亡命 長靴をはかざる猫を飼いながら書物亡命久しからずや 亡国の猫一匹がまたぎとぶわが顔の上影かなしからずや 影が下は羽 ふしあわせという名の猫を飼いころすわが影の外へ出さず 十二支に加わりざりし猫のため書斎にけむり立ちのぼらしむ 幻灯のひなたぼこりに一匹の猫がけむりとなるを見ており
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この本は寺山修二没後25年、未発表の作品をまとめた歌集。 やはり寺山修二の歌人としての才能はものすごいと思った。 ◆地平線描きわすれたる絵画にて鳥はどこまで墜ちゆかんかな ◆おとうとよ月蝕すすみいる夜は左手で書けわが家の歴史 ◆面売りが面つけしまま汽車に乗るかなしき父の上海事変 ◆月光のプールサイドに腰かけて誰を迎えに来たる悪霊
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44/100 解説で佐佐木幸綱さんがおっしゃっている通り、 良くも悪くも寺山修司。 未発表歌集とはいえ こんなの読んだことない、っていう感覚は無いけど これはまさしく寺山修司、っていう期待は裏切らない。
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良くも悪くも未完の歌集。寺山修司の創作ノートだと考えた方がよい。並べ方も作品の取捨選択も、編者の手によるものなので、寺山修司の作品集とは呼べない。未完原稿のコンピレーションである。だが、たしかに寺山修司の世界が広がっている。寺山は晩年は劇団と映画に熱中していたが、同時に歌を取り戻...
良くも悪くも未完の歌集。寺山修司の創作ノートだと考えた方がよい。並べ方も作品の取捨選択も、編者の手によるものなので、寺山修司の作品集とは呼べない。未完原稿のコンピレーションである。だが、たしかに寺山修司の世界が広がっている。寺山は晩年は劇団と映画に熱中していたが、同時に歌を取り戻そうとあがいてもいたのだ、という事実が新鮮である。短く完成された世界に未練があったのだろう。たしかに寺山の物語や映像作品はすでに短歌のなかに広がっていて、そのスピンアウトと言うべきものが劇や映画であった気がする。つまり、この未完の歌集のなかにはもう完成できないであろう新しい世界のかけらが閉じこめてある。瓶の中の未来。
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タイトルと装丁が魅力の歌集。中身は寺山修司の残骸。。。。。。 亡き寺山は、本にして発表されたくなかったのではないかと思います。
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