青い空を、白い雲がかけてった 完全版(文庫版)(下) の商品レビュー
このマンガに出会ったのは本当にたまたまだった気がする。坂口尚さんのマンガを読んでいた時に、たぶん出版社の宣伝一覧に並んでいたのがきっかけだったと思う。なかなか手に入りにくくなっているのが非常に残念だ。 読んでいると、昔夢中になってみたデジモンと同じようなどこか切なさというか、胸の...
このマンガに出会ったのは本当にたまたまだった気がする。坂口尚さんのマンガを読んでいた時に、たぶん出版社の宣伝一覧に並んでいたのがきっかけだったと思う。なかなか手に入りにくくなっているのが非常に残念だ。 読んでいると、昔夢中になってみたデジモンと同じようなどこか切なさというか、胸の締め付けられるあの感じでいっぱいになった。 それは、登場人物たちのまっすぐさというのか、マンガという形式そのものが持つそぎ落としの効果なのか。不思議なものに出くわした時の飾らない心の動き。試行錯誤や衝突を繰り返した先にある成長の感覚。マンガから外れた普段の生活では、もっともっと様々な思惑や都合によって、痛みや苦しみ、喜び、悲しみもそれをそれとして発見するより先に隠されてしまったり日々の生活の中で流されてしまったりする。彼のマンガはそうした思惑や都合、生活をきれいにそぎ落として体験・感情をそのまま発見させる。 確かに時代が書かれたものであるから学生像が今自分の立っている時間や自分が登場人物たちと同じくらいの年回りの頃のそれとは異なる。 けれど、この体験や感情の発見そのものは時代がいくら変わっても変わらずにどこか切ない儚い輝きを放っているような気がしてならない。これを単に昭和の輝きと過去のものとして一蹴できるほど、ひとは成長してこれたのだろうか。 どこか生活に耳を傾け蓋をしてしまったり、置いてきぼりにしてしまったりしたものに出会うたび、過ぎ去った時間とそれほど大した距離を歩いてこなかった今というたったひとつの時間を思い知らされる。
Posted by
- 1