日中の経済関係はこう変わった の商品レビュー
著者は外務省経済政策専門家。 財務省に入省した後退職、北京大学や香港大学への大学院留学経歴もあるとのことですが、なんと1975年生まれ。若い! かなり優秀なのでしょうねぇ。 今年、北京五輪開催を契機に30年の歴史に終止符を打つ対中円借款。 その円借款の歴史を切り口に、1970年...
著者は外務省経済政策専門家。 財務省に入省した後退職、北京大学や香港大学への大学院留学経歴もあるとのことですが、なんと1975年生まれ。若い! かなり優秀なのでしょうねぇ。 今年、北京五輪開催を契機に30年の歴史に終止符を打つ対中円借款。 その円借款の歴史を切り口に、1970年代から現在に至る日中関係の推移を紐解いていきます。 円借款終了が論議され決定に至ったのは2004年から2005年にかけて、小泉政権で町村外相だった頃でした。 当時はサッカーアジア杯中国大会でのブーイング問題や、領事館や日本料理店への投石事件など、日本国民の対中感情が急速に悪化したタイミング。 一方で中国は経済成長により急速に「大国化」し、大規模資金援助の必要性も相対的に小さくなってきた状況にあり、広い意味で円借款継続の「費用対効果」が低下した、と分析されます。 ただし、それは21世紀に入った現時点での日中双方の位置関係を前提にした見方であり、中国が事実上の鎖国状態から改革開放路線に歩み出したばかりの状況だった70年代から80年代にかけて、日中の経済関係あるいは政治関係において円借款が果たした役割は大きかった、と著者は評価します。 確かに中国ほど近年急速にその実態とイメージを変貌させた国はない。 自分は中国本土には未だに訪れたことがありませんが、大学生の頃に返還前の香港には行ったことがあります。 その当時、たかだか15年ほど前のことですが、日本や香港に比べて中国本土といえばまだまだ後進の国という印象が強かった。 我々は何かと現時点でのイメージを前提に物事を考えてしまいがちですが、前提となる状況自体が可変で相対的なものであるという視点を忘れてはなりませんね。 事実ベースで非常に丁寧に論説が重ねられた本です。 ちょっと丁寧過ぎて冗長に感じられるところがあるくらいですが。
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