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煙る鯨影 の商品レビュー

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2016/10/04

東京神楽坂には本のセレクトショップとも言うべき本屋さんが、少なくとも2軒ある。 1軒は、その名前に親近感を抱く「かもめブックス」。もう1軒は本書を買った「神楽坂モノガタリ」で、店内にCafeがしつらえてあり、ビールも飲める。私が訪れた時は店休日前日の遅い時間だったため、ビールをタ...

東京神楽坂には本のセレクトショップとも言うべき本屋さんが、少なくとも2軒ある。 1軒は、その名前に親近感を抱く「かもめブックス」。もう1軒は本書を買った「神楽坂モノガタリ」で、店内にCafeがしつらえてあり、ビールも飲める。私が訪れた時は店休日前日の遅い時間だったため、ビールをタンクから抜く必要があるからと、本を買ったときに一杯すすめられた。迷わずビールを頂き、ソファに座り、買ったばかりの本を少し読んだ。 それから何か月経ったかは数えないが、ビールを飲みながら読み始めた本書を、ウイスキーを1ショット飲みながら読み終えた。 太地を母港に持つ勝丸の、ワンシーズンの捕鯨を描いたノンフィクションで、過去の史実である捕鯨時の海難事故である”大背美流れ”や、現在の捕鯨を取り巻く世界情勢を語りながら、勝丸の操業の現場が書かれている。驚くことに、勝丸は太地近海だけでなく、房総沖や知床沖まで出張って捕鯨している。やはり、心躍るのは鯨を捉える描写で、第7章の房総沖での捕獲シーンや、知床半島の静かな描写から、一気に転じて獲物を捉える躍動感に惹かれる。 捕鯨を取り巻く国際情勢に触れながらも、賛否を鮮明にすることを避けたところに、本書の読み易さがあると思う。その立場が”捕鯨”を一つの仕事として、また勝丸の船長や乗組員を捕鯨という仕事に取り組む職業人として書けた要因だろう

Posted byブクログ