長く熱い復讐 新装版(上) の商品レビュー
日本ミステリ・ハードボイルド小説界の巨大な独立峰。
四十代後半以降の男性で、大藪春彦と言う作家を全く御存知無いと言う方は、恐らく殆ど居らっしゃらないのではないかと思います。 若しくは、松田優作の有名な映画で辛うじて知っているという方も多いかもしれません。 著者が亡くなり、時代は流れ、すっかり大藪春彦の作品は時代遅れに成った...
四十代後半以降の男性で、大藪春彦と言う作家を全く御存知無いと言う方は、恐らく殆ど居らっしゃらないのではないかと思います。 若しくは、松田優作の有名な映画で辛うじて知っているという方も多いかもしれません。 著者が亡くなり、時代は流れ、すっかり大藪春彦の作品は時代遅れに成った観が有ります。 しかし、大藪は他の誰とも似ていない、世界中のミステリ、ハードボイルド小説とも全く異質な小説世界を作り上げた、あらゆる小説ジャンルにも与しない、正に『独立峰』なのです。 どんなに時代背景や物価、取り扱う武器が古くなっても、 彼の作品の必ず核に有る『燃え滾る憎悪』と言う感情は、いつの時代に成っても、或る一定の若い時期に訪れる「鬱々とした、生きていく事へのもどかしさ」や「茫漠とした世間への反発心」を限りなく刺激し、その暴力描写は「やり場の無い強い憤り」の捌け口として、現代の若者達にとっても「自分だけにしか分からない、何とも言い表せない感情」に同調し、寄り添ってくれる小説で有る筈です。 「平和ボケ」した国民が増え「草食系」と言われる若者が増えてきた現在、年配者が再読しても尚、熱の滾るような「憎悪」の感情は、年齢を飛び越え、時代を超越して、読む人の心に突き刺さる力をまだまだ秘めていると思います。 ただ残念ながら彼の膨大な作品群は、今はもう殆ど市場から消えてしまいました。 しかし、この作品だけではなく、「野獣死すべし」「蘇える金狼」「みな殺しの歌」等、初期~中期の作品群であればまだ販売しており、どれを読んでも同じように味わう事が可能です。 (逆に、後年に成るに従い、著者の熱量が段々下降していく為、シリーズ化しているもの等、新しい著作は余りお奨めしません。) 銃器マニアの方なら、基礎から学べる素晴らしい教科書でも有り、 人間(男)が「真の野性」を忘れない為に、絶対に避けて通って欲しくない小説です。 こんな現代だからこそ、若い方(特に男性)に、是非とも読んでいただきたい!!!
左衛門佐
記憶喪失になった囚人鷲尾進が脱走し失われた記憶、惨殺された妻への復讐を冷酷に実行する。武器、アウトドアなどいつもの展開も盛り込まれている。
Posted by
- 1