予告された殺人の記録・十二の遍歴の物語 の商品レビュー
予告…は既読のため、短編の方。欧州とラ米人、しかもスペインよりはフランスやイタリアという言語が途切れているところで、登場人物が滑稽にどことなく非現実に描かれている。しかしまた、どれもジャーナリズム的ではある中で、気付くと狂気の殺人が行われたベッドで寝ていた、という話が妙にリアルで...
予告…は既読のため、短編の方。欧州とラ米人、しかもスペインよりはフランスやイタリアという言語が途切れているところで、登場人物が滑稽にどことなく非現実に描かれている。しかしまた、どれもジャーナリズム的ではある中で、気付くと狂気の殺人が行われたベッドで寝ていた、という話が妙にリアルで際立った恐さを与える。
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「予告された~」を文庫で読了後、「十二の遍歴の物語」のために購入。マルケス凄い。強烈に面白い。どこか異国情緒を感じて、共感できないにも関わらず引き込まれる快感。「聖女」「電話をかけに来ただけなの」「光は水のよう」
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実際に起きた殺人事件の顛末を丹念に描くことによって、ラテンアメリカ社会のいろんな面が見える。語り口がうまいから、物語としても楽しめる。 併録の『12の遍歴の物語』は、想像力豊かな短編集だが、ラテンアメリカの作家がヨーロッパを舞台にすることによって、独特の雰囲気が生まれている。文学...
実際に起きた殺人事件の顛末を丹念に描くことによって、ラテンアメリカ社会のいろんな面が見える。語り口がうまいから、物語としても楽しめる。 併録の『12の遍歴の物語』は、想像力豊かな短編集だが、ラテンアメリカの作家がヨーロッパを舞台にすることによって、独特の雰囲気が生まれている。文学性も高い。
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予告された殺人の記録のほうが読みたくて借りたけど、十二の遍歴の物語のほうが面白かった。いきなりヨーロッパの香り、素敵な短編集。
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初めてガルシア=マルケスを読む。その言葉の放つ輝きで、胸が一杯になる。余りのまぶしさに頭がくらくらとする。 カラフル、という言葉がまず記憶のメモ帳に刻まれる。そうだ、これはとてもカラフルな物語である。そして読み進める内にまた、別の想いが募ってくる。今度は、コントラスト、と心に刻...
初めてガルシア=マルケスを読む。その言葉の放つ輝きで、胸が一杯になる。余りのまぶしさに頭がくらくらとする。 カラフル、という言葉がまず記憶のメモ帳に刻まれる。そうだ、これはとてもカラフルな物語である。そして読み進める内にまた、別の想いが募ってくる。今度は、コントラスト、と心に刻む。明と暗が瞬時に入れ替わり、フラッシュが焚かれた後のような眩暈を覚える。 『予告された殺人の記録』は、とても短いセンテンスで埋め尽くされているのだが、その一つ一つの文章が持つ強さと、文章を読み終える度に襲ってくる異なる感情の波のうねりに溺れそうになる。そしてそのコントラストが、逆にニュートラルな視点を支えていることが見えてくる。どこまでも熱く、汗にまみれて、怒りに駆られているような言葉の裏で、ひどく孤独な、世の中を突き放したかのような目があるのだ。その佇まいがひどく奇妙ではあるけれども、ニュートラルであるという想いへつながる。 『十二の遍歴の物語』では、作家のエチュード的な要素を存分に味わう。ある登場人物に対する自分の思い入れが二転三転するのを発見して、作家のしたたかさを堪能し、物語の行く末が、次々と現れる細い曲がり角を回るように変化するのを見て、その才能にうなる。 そうしてやがて、インターナショナル、あるいはトランスカルチャラルという言葉が浮かんでくる。インターナショナルという言葉は既に手垢にまみれ過ぎて、特に自分たちには、ほぼ「アメリカ的」という意味合いが響きすぎてしまうけれど、国という囲いを越えて、民族という纏まりを越えて、さらに文化というもっとやんわりとした括りも越えてゆこうとする意思が、文章の中から読むものへ届いてくる。そうなると、その動きがスペイン語を通してなされることの意味も、同時発生的に沁みてくる。 スペイン語でこの文章が書かれることには、光と影の両面があるだろう。つまり、越えてゆこうとする多様性を包括するものとしての言葉である、と同時に(それは最大公約数的な共通基盤を与えてくれるだろう)、その言葉を自らが語らなければならないことの意味(歴史的、と一応限定しよう)への絶えざる意識ということも、作家の中に呼び起こすのだろうと思うのだ。ル・クレジオのようなエクソフォニーへ向かう生き方もある一方で、自分には、ガルシア=マルケスからは、その言葉から抜け出そうとする意思ではなく、言葉をとことん手段として使ってやろうとする意思のようなものを感じる。 それはまるで音楽家が頭の中にあるイメージを音符という記号にかりそめに託すような行為にも思える。そう喩えてみて、ようやく、その記号を辿ることによって再現されるものが、自分の頭のなかでとても強烈な音楽として響いていることが解った。
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『予告された殺人の記録』は著者自身が実際にあった事件をモチーフに町の人間に取材していくかたちで進んでいく小説です。町中の人間に知れ渡り、犯人が誰かもわかっており、当の犯人のやる気も欠けているにもかかわらず、彼は滅多切りにされてしまった。殺人事件が起こるまでとその顛末をドキュメン...
『予告された殺人の記録』は著者自身が実際にあった事件をモチーフに町の人間に取材していくかたちで進んでいく小説です。町中の人間に知れ渡り、犯人が誰かもわかっており、当の犯人のやる気も欠けているにもかかわらず、彼は滅多切りにされてしまった。殺人事件が起こるまでとその顛末をドキュメンタリー形式で追います。形式の面白さだけなく、犯人がなぜ犯行におよぶにいったのか、周りの人間の考え方、それらに含められた風刺に気付かされます。物語とジャーナリズムを混合・再生成することで、人生における一つの運命が濃厚に圧縮されています。 『十二の遍歴の物語』はヨーロッパを舞台にした短編集に、ガルシア・マルケスがこれらを書くまでを語った「緒言」とノーベル文学賞受賞講演「ラテンアメリカの孤独」が加えられています。「悦楽のマリア」「毒を盛られた十七人のイギリス人」が好きです。 「悦楽のマリア」は夢のお告げによって知らされた自分の死期のために着々と準備を進めるマリア・ドス・プラゼーレスが、当の死期を迎えたときに何を思ったのか。「悦楽」の意味がよくわかりました、 「毒を盛られた十七人のイギリス人」ではローマの教皇の告解を受けるべくイタリアのナポリにたどり着いたプルデンシア・リネーロ夫人が異国の地で次々と起こる出来事に振り回される話です。確かに一日にこれだけのことが起こったらぐったりしそうです。
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【08.7.5/図書館】 「予告された殺人の記録」は、「見えざる集落の崩壊」が生んだんだろうと思われる、ある意味無意味な殺人事件の顛末。 読み進めれば読み進めるほど、何故この事件が起きてしまったのか、わからなくなっていく。 わからなくなっていくが、見て見ぬふり系の自分の身に置き換...
【08.7.5/図書館】 「予告された殺人の記録」は、「見えざる集落の崩壊」が生んだんだろうと思われる、ある意味無意味な殺人事件の顛末。 読み進めれば読み進めるほど、何故この事件が起きてしまったのか、わからなくなっていく。 わからなくなっていくが、見て見ぬふり系の自分の身に置き換えれば、おそらく必然的にこういう事になってしまうのではないのかとも思う。 なんというか、現代、往々にしてこういう事件ってありそう。 短編集の「十二の遍歴の物語」も、面白い話が色々とありました。 これらは読直後より、しばらくしてからジワッと、なにかが頭を巡りそう。
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