エロ事師たち の商品レビュー
滑稽でもの悲しい男の性
性(さが)とも言うべき男の屈折した性(せい)を巡る出来事が、明るく衒いのない筆致で描かれている。主人公たちが仕事として男の性に真剣に向き合い、極めようとすればするほど、その姿は滑稽でもの悲しい。
fugyogyo
人間は食欲を満たすた…
人間は食欲を満たすために、色々な料理を楽しみますが、性欲を満たすためにも、いろんな事をやっているんですねー。自分たちの仕事が好きで、誇りをもっている主人公達に感心します。
文庫OFF
谷崎潤一郎賞候補に挙がり、純文学とは何か?を考えた一冊。 性にひたむきなダメ男達が、無い頭を試行錯誤しながら(たまにちょっと頭が良い)馬鹿な事に突き進む会話劇。 悔しいが終始愉快で話の展開も退屈せず楽しめた。陰毛が落ちてるに違いないと、女子学校に拾いに行く所など頭を抱えたが、他...
谷崎潤一郎賞候補に挙がり、純文学とは何か?を考えた一冊。 性にひたむきなダメ男達が、無い頭を試行錯誤しながら(たまにちょっと頭が良い)馬鹿な事に突き進む会話劇。 悔しいが終始愉快で話の展開も退屈せず楽しめた。陰毛が落ちてるに違いないと、女子学校に拾いに行く所など頭を抱えたが、他作では絶対に読めないシーンだろう。
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面白かった。 澁澤龍彦やサドっぽくて好き。 男性の情けなさ、それも究極の情けなさはやはりあれだったのか。 登場人物が変な男ばかり! そこが良かった。 ノーマルな男の話ではないので、まあ変態ばかりなのですがエロ事師たちが陰で棲息していてその後どうなるのか気になりページを捲る手が止ま...
面白かった。 澁澤龍彦やサドっぽくて好き。 男性の情けなさ、それも究極の情けなさはやはりあれだったのか。 登場人物が変な男ばかり! そこが良かった。 ノーマルな男の話ではないので、まあ変態ばかりなのですがエロ事師たちが陰で棲息していてその後どうなるのか気になりページを捲る手が止まらず。 うまく紡ぎ合わせてあり無理もなく、野坂昭如のテーマをふんだんに楽しめました。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
わたし、先月末で67歳になりました。いえ、おめでとうはいりません。なぜこんな事を言うかと申しますと、こんな歳になってもこの本の感想を書くのははずかしくて、読んでも知らん顔しようかと思ってしまう、そのかまととぶってるいくじなさにあきれてしまうからです。 題からも想像がつくように、文面を引用したらきっとネットの規制が入ってしまう文字が踊っております。でもちっともいやらしくないんです。読んでいるとふきださずにいられません、そういう自分が「おとな」になったなーと思うのです。えっ、やっぱりかまととぶってて気持ち悪い?それがこっぱずかしいのです! 直木賞の『火垂の墓』『アメリカひじき』もいいけれど、やっぱりこれが野坂昭如の一番の傑作ではないかと思います。おとこのどうしょうもないエロ好みをおもしろおかしく書いています。イロじゃないんです。エロなんです。 スブやん。主人公です。「酢豚の略。肥ってはいても、どこやらはかなく悲しげな風情に由来」からついたあだな。哀しげ、酸いような顔を思い描き、これだけでも笑いました。 仲間のエロ事師たちと法の網目をくぐり、あぶない写真を作り販売、ブルーフィルム作成し映写会、女との仲立ち...のビジネス。そう、今ならネット出会い系サイトなのでしょうかね。 ビジネスはビジネスでいろいろ苦労するのが見ものです。でも、そこから見えてくる「おとことおんなのとんちんかん」がおもしろいです。「男と女のさが(性)」じゃなくてです。むしろ「おとこの思いこみ」みたいなものがおかしいです。 ほんと「おとこ」ってあわれですねー。って書くのがこっぱずかしいです。そんなに知りもしないくせに…。
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名前は知っていたが,野坂昭如の作品を読むのは初めてである。当時は作家のみならず広範囲のタレント的な存在だったようだ。 本作はデビュー作だというが,既に安心して読める滑稽さが感じられる(新人らしさというか,危うさがない)。自らをエロ事司と名乗る「スブやん」とその周辺の人々。戦後と...
名前は知っていたが,野坂昭如の作品を読むのは初めてである。当時は作家のみならず広範囲のタレント的な存在だったようだ。 本作はデビュー作だというが,既に安心して読める滑稽さが感じられる(新人らしさというか,危うさがない)。自らをエロ事司と名乗る「スブやん」とその周辺の人々。戦後と現代をつなぐ部分として見逃せない。 解説を先に読んだのだが,なんと澁澤龍彦の文だった。「ひたすら観念のエロティシズム,欠如体としてのエロティシズムにのみ没頭する一種独特な性の探求家」と評している。 全体的に,悪趣味だがユーモアが散りばめられていて,読んでいて面白い。 ある種タブー視される「臭いもの」の描写が,何気に多いのではないか。何気に,というのは,特に情感込めたわけでもなく,気を惹きつけようという意図も感じない,にも関わらず,時間の流れの中に存在感をズシンと構えていることから。 堕胎と水葬が軍隊ラッパに乗せられて,死骸の脇で麻雀しながらオナニー体験談で盛り上がって。グロテスクを吹き飛ばしかねないおかしさがそこに横たわる。しかし時代を考えると,焼けた灰を纏い生きる人々なのであり,ある種の慣れともいえる。 不謹慎ではあるがどこか下品なりの論理を感じさせられる。 p146「〜そやけどエロ事師の本領はなんというても女やで。〜みんな女房もっとる,そやけどその女房では果たしえん夢,せつない願いを胸に秘めて,もっとちがう女,これが女やという女を求めはんのや。実際にはそんな女,この世にいてえへん。いてえへんが,いてるような錯覚を与えたるのが,わいらの義務ちゅうもんや。〜目的は男の救済にあるねん,これごエロ事師の道,エロ道とでもいうかなあ」 ちょっと前にインポだと言われた人間の口上と考えると余計にツッコみたくなる。しかも死んでからようやくビンビンにたったし。 サド侯爵が高らかと読み上げるようなものを,本作の語りでは大阪弁の会話と地の文の交錯でうなっている。それにしてもスブやんは,人々に夢(?)を与えるごとに自身の欲求が遥か向こうに遠ざかってしまっているようだ。かすかに逼迫しているような気もする。 性そのものへのアイロニーというか,ある種人生そのものへのアイロニーを感じた,特にオチ。終盤のパーティでの人物紹介なんかは「ソドム百二十日」を想起せずにはいられない。エロティシズムの観念自体は過去の文学作品にあるテーマであるが,こうも透明な文章は中々ないかもしれない。変に美化しない,悪趣味に誠実,そこが良い。
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カバー絵がちょっと下品だが、中身の文章はとても魅力的だ。 関西弁のやりとりが心地よいリズムで押し寄せて来る。 ついつい時間を忘れて最後まで読んでしまった。 カバー絵でとても損をしていると感じた。
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西川美和さんの「名作はいつもアイマイ」に出てきて、興味を持って読んでみた。 標準語では表現できない作品だといえば、そんな気もする。 僕は兵庫出身なので、それなりに大阪弁を使ったことはあるんだけれども、時代のせいか、地方のせいか、ちょっと知っているのと違う言葉遣いだった。 乱行パー...
西川美和さんの「名作はいつもアイマイ」に出てきて、興味を持って読んでみた。 標準語では表現できない作品だといえば、そんな気もする。 僕は兵庫出身なので、それなりに大阪弁を使ったことはあるんだけれども、時代のせいか、地方のせいか、ちょっと知っているのと違う言葉遣いだった。 乱行パーティが描かれていたが、ホントにあんな風なかんじで成立したりしているんだろうか。野坂氏の想像なんだろうか。直感的には、ありえないんじゃないかと思うけど… しかし、野坂さんとえいば、ちょっとどもりながら、テレビで大島なんとかさんという呼び名は監督だけどなにをやってるかわからない人と口論するへんな人という認識だったが、作家でもあったということがよくわかりました。
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お上の目をかいくぐり、世の男どもにあらゆる享楽の手管を提供する、これすなわち「エロ事師」の生業なり――享楽と猥雑の真っ只中で、したたかに棲息する主人公・スブやん。他人を勃たせるのはお手のものだが、彼を取り巻く男たちの性は、どこかいびつで滑稽で苛烈で、そして切ない……正常なる男女の...
お上の目をかいくぐり、世の男どもにあらゆる享楽の手管を提供する、これすなわち「エロ事師」の生業なり――享楽と猥雑の真っ只中で、したたかに棲息する主人公・スブやん。他人を勃たせるのはお手のものだが、彼を取り巻く男たちの性は、どこかいびつで滑稽で苛烈で、そして切ない……正常なる男女の美しきまぐわいやオーガズムなんぞどこ吹く風、ニッポン文学に永遠に屹立する傑作。
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あなたが作家を目指しているとしましょう。 読んだ人が感動するような作品が書きたい―。 立派な動機です。 テーマも明確。 筋立ても固まりました。 もちろん、力量は十分にあります。 さあ、では、執筆に取り掛かろう。 ちょっと待ってください。 その前に、本書「エロ事師たち」を読みましょ...
あなたが作家を目指しているとしましょう。 読んだ人が感動するような作品が書きたい―。 立派な動機です。 テーマも明確。 筋立ても固まりました。 もちろん、力量は十分にあります。 さあ、では、執筆に取り掛かろう。 ちょっと待ってください。 その前に、本書「エロ事師たち」を読みましょう。 打ちのめされます。 登場人物は、ブルーフィルム(ポルノ映画)の制作に勤しむ裏社会の男たち。 一筋縄ではいかない、一癖も二癖も三癖もある男ばかりです。 より過激で刺激的な作品を作ろうと、男たちは官憲の目をかいくぐりながら暗躍します。 たしかにエロい。 グロテスクでもあります。 でも、文学的な香気が確かに漂っている。 野坂33歳のデビュー作。 脱帽するほかありません。 昭和48年生まれの自分が物心ついた時には、野坂は既に「テレビの人」でした。 それが原因で、ずっと彼の小説をスルーしてきました。 もっと早く読んでいれば良かったですね。 本書が文学だとすれば、自分の文学観はいかにも浅いと認めざるを得ません。 文学は、自分が考えているよりももっと深いところで蠢いている何かです。 もちろん、どんな文学があってもいい。 ただ、本書を読めば、文学の深さと広さが、ともに6センチは大きくなるはずです。 共に頑張りましょう。
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