ミル自伝 の商品レビュー
歴史を書くのは全然義務ではなかったが、義務として書かなければならなかったものもある。詩である。あれは、課題の中で大嫌いなものの一つだった。なにもギリシャ語やラテン語で書かされたのではない。そもそも作詩法も教わらなかった。そんなことに時間をかける価値はないというのが父の持論で、朗読...
歴史を書くのは全然義務ではなかったが、義務として書かなければならなかったものもある。詩である。あれは、課題の中で大嫌いなものの一つだった。なにもギリシャ語やラテン語で書かされたのではない。そもそも作詩法も教わらなかった。そんなことに時間をかける価値はないというのが父の持論で、朗読させて音律のまちがいを直すだけでよしとしていたからである。ちなみにギリシャ語では散文すら書かず、ラテン語でも申し訳程度だった。外国語の完全な習得に作文が効果的であることを父が知らなかったはずはないが、そのための時間がどうしてもとれなかったからである。というわけで、私が書かされたのは英語の詩だった。
Posted by
- 1